モモ(紀州犬雑種・女の子・4歳)とドリアン(アメリカンショートヘアのハーフ・おじさん・11歳)は世の中の犬と猫がそうであるように、仲が悪い。モモが生後3ヶ月でもらわれてきたとき、最初の出会いでモモにドリアンが連続猫パンチを喰らわせて以来、「こんな意地悪なおじさん大嫌い!」とモモに刷り込まれたらしく、それからドリアンがモモの縄張りに少しでも入ると「ウワン!ウワン!」と大騒ぎである。ドリアンのほうも、彼は坊ちゃん育ちのへたれなので、猫パンチしか武器がないにもかかわらず、こまめにモモと彼の縄張り境まで出張っては「フーッツ!フーッツ!」と猫的威嚇をする。一見ドリアンのほうも「この小娘が何を勘違いしちょるか。」と思ってそうであるが、何年か観察していて「事はそう単純ではないのではないか?」という結論に達している。ドリアンはモモをたいそう意識している。鶏番も兼ねているモモの縄張りは広いが、ドリアンは「モモ、向こう側にいってるな。」と判断したら、常日頃モモが常駐している場所に、そろりそろりと猫的忍び足で近寄り(その用心は傍で見ていておかしい)、首を伸ばして向こうのモモの様子をうかがい、鼻をひくひくさせてそこらに残っているモモの匂いを嗅ぐ。几帳面な彼らしく隅々まで嗅ぐ。なかなかの執着ぶり。「あんたほんとはモモのこと大好きなんじゃないの?」
10ccの名曲”I’m not in love”をBGMにかけてやろうか。美しいハーモニーと遠鳴りの潮のようなシンセサイザー、心臓の鼓動のようなベースの音の上に、男の声で”I’m not in love・・・I’m not in love・・・”「僕は愛してなんかいない・・・愛してなんかいない・・・」と切なくささやきつづける、素直でないくせに執着する男の愛を歌った歌。あんたにぴったりだわ、ドリアン。