ひょうたんには魔力がある。昔からひょうたんの出てくる話は妙に印象に残る話が多かった。「千夜一夜物語(いわゆるアラビアンナイト)」の中の「船乗りシンドバッドの航海」の中の「海の老人」の話の中にも出てくる。
航海で遭難したシンドバッドは無人島にたどり着き、そこで痩せこけた老人に出会い、「わしをおぶってくれ」と頼まれる。実はその老人は「海の老人」という妖怪で、日本でいう「おんぶおばけ」みたいなものだったのだ。老人はシンドバッドに肩車をさせたまま、一日24時間離れなくなってしまう。こわー。その上「あっちへ行け、こっちへ行け、」と好き放題に指図し、いうことを聞かないと落ちる寸前までシンドバッドの喉を太ももで締め付ける。このときの、シンドバッドの老人に対する肉体的な嫌悪感が妙にリアルでね。犯されてる感じみたいな・・・。結局ふらふらになったシンドバッドは、島にひょうたんと葡萄が成っているのを見つけ、老人の隙をうかがって、ひょうたんの中に葡萄をつぶして詰め込み、葡萄酒を造る。これがなあ、いかにもうまそうなのよ。わたしは酒が飲めないのに、匂いまでしてきそうだった。先に嫌悪感のリアルさがあるから、この鼻や舌の感覚もリアルに感じたんだと思う。案の定妖怪「海の老人」もそのひょうたんの中の酒にひかれて、シンドバッドから無理やり取り上げて、一杯やり始める・・・・・。
「千夜一夜物語」って大人向けの話だよねえ。まことに助平で残酷な話ばかり満載なのに、「子供向け」とやらに改悪して、一番おもしろいところをカットして読ますのはどうかと思うよ。世界的古典を「なんだこんなもんか」と思うのは返って危険だよ。危ないところを読ませたくないなら、最初から読ませるな。「大人だけが楽しめるのよ。早く大人になりなさい。」でしょ?