ドミノ

Nec_0062_3昔京都に祇園会館とみなみ館という名画座があり、学生時分毎週末にオールナイト3本立てを観に行ってました(当時は徹夜も大丈夫でした)。 一生で一番映画を観た時期でしょう。

すでに重症のマンガ・ジャンキーで活字中毒者だったので、自分が好きなマンガや小説を「どうやったらおもしろい映画にできるかなあ。」と、勝手に監督や俳優をキャスティングして楽しんでました。映画好きがよくやる遊びだよなあ。

今はもう映画どころかTVもほとんど見ない生活になってしまいましたが、マンガと本はあいかわらずなので「これは!」という作品に当たると「ええっと、映画にしたほうがおもしろいかな?それともTVドラマにしてじっくり見せたほうが・・・」などと勝手な事を空想することはよくあります。それで、今一番「映画化したらおもしろいのに~!」と思うのがこれ。

「ドミノ」(恩田陸著・角川書店)。

これはね――――!おもしろいよ――――!!文字通り大笑いするぞー――!!

SF作家筒井康隆氏が始めた、スラップスティックという群像ドタバタ劇とでもいうべきジャンルがあります。「ドミノ」はそれの無二の傑作です。恩田陸氏の作風は通常ホラーやミステリーに近いので、こげなお笑いの傑作を書けるとは本当にたまげました。恩田氏いわく「恐怖と笑いは近いところにある感情」なのだそうですが。

群像劇なので登場人物がやたら多いです。しかし、この小説の真の主役は迷路のように入り組んだ構造を持つ東京駅。その東京駅の構内で、夏のある一日に起こった世にも稀な大騒ぎをいろんな切り口でいろんな視点からあますところ無く書くという手法をとってます。

なにせこの事件に関わったのが

  1. 営業成績に追われる保険会社の社員たち
  2. その保険会社の契約書を届けてくれる元暴走族の千葉のピザ屋たち
  3. そのピザ屋を追いかける千葉県警の巡査たち
  4. その保険会社主催のミュージカルのオーディションを受けている子役志望の女の子たちとその親たち
  5. 別れ話を東京駅の喫茶店でしようとしている銀行員と青年実業家と画廊に勤めるその従妹
  6. 学生ミステリ連合会の会長の座を争う学生たち
  7. 熱狂的ファンを持つアメリカ人のホラー映画監督とそのペットと通訳を務める霊感女
  8. TVキャスターとそのスタッフたち
  9. ネット俳句の会の茨城の農家と元警視庁OBたち(全部じじい)
  10. 時限爆弾を東京駅に仕掛けようとしているドジなテロリストたち

ざっと、数えただけでもこれだけの登場人物。普通これだけ人間が出てきたら話がごちゃごちゃして訳がわからなくなるんだけどなあーー。恩田陸はすごいぞ!すべての登場人物と状況を、生き物の内臓のように入り組んだ東京駅の構内で絡み合わせ、ダイナミックに動かし、さらなる大笑いの渦に叩き込んでくれるぞ。それでありながら非常にシンプルでわかりやすい。タイトルの「ドミノ」は、このたくさんの登場人物たちが、まるでドミノ倒しのように関わり合い干渉しあいながら、とんでもない方向へ状況を運んでいくことからつけられたのでありましょう。

恩田氏も「リストの端から端まで」読んでしまうリスペクトする作家ですが、こんなお笑いモノが書けるとは思っていませんでした。小説を読んで思わず声を出して笑ったのは本当に久しぶりです。とにかく読んでみてください!このおもしろさをぜひ誰かと分かち合いたい。

それで誰かこれを映画化してくれないかな?ほとんど東京駅構内の話なので予算もかからないと思うんだけれど。あああッ日本だと公共の場での撮影の許可がでにくいのか?なんとかそれをクリアーして、誰か、誰かこれを映像化してくれえええ―――!!

コメント(8)