椿屋敷のお客様

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2006年8月 8日 (火)

毎日かあさん・背脂編

Nec_0014_18わたくしの知る限りの子育て中のお母さんは、みんな質実剛健です。

今の日本で妻となっても働かないと生活できないのは普通。(『景気の回復』なんて嘘だよな。『平成の大本営発表』じゃねえのか?)。働き、家事をし、ご近所づきあいをこなし、なおかつ親の介護までかぶりながら必死で子供を育ててる、そんなお母さんばかりです。

だから、よくある「いまどきの母親は、子供をよう育てられない。」とすべての母親を一括してくくる ご発言には猛烈に頭にきます。

ニュースで取り上げられる、虐待や子殺しをしたごく一部の母親の話を一般論に持ってくるのは止めろ!

どんな世代にも虐待や子殺しをした親は、必ず同じぐらいのパーセンテージで存在しています。だいたい「虐待をした人間は、自分も子供時代に虐待を受けている。」というデータがあるわけでしょうが。「親の因果が子に報い」なんだよ。昔はTVがなかったから、秋田だの福島だのの話を余所の土地の人間は知らなかったし、「児童虐待」という概念もなくて「躾」の中に入れるバカもいたからやはりひどい話はあったわけですよ。知らなかっただけで。

「『母さんは~夜なべをして手袋編んでくれた~♪』母親ばかり昔はいたのに今は・・・」バカなことを言うな!子殺しも子捨ても昔からあったし、今の大多数の母親も綺麗事ばかりじゃない子育ての現実で必死なんだよ。文句いうヒマがあったら手伝えよ!

――――というわけで大好きな西原理恵子氏の「毎日かあさん③・背脂編」(小学館)です。

西原氏の何が好きって、かますギャグと、その後ろに見え隠れする切なさと哀しみのバランスがいいのです。しかもそのギャグがとんでもなくスケールがでかい。全世界を股にかけて、それが決してお行儀よくない。アンダーグランドすれすれだったりする。観察眼が凄いんです。妙なモラルや固定観念のフィルターをかけずに、あるがままを描く。「これは今まで誰も描かなかったシンガポール(タイでも、カンボジアでもいろんな国名を入れてください)だな。」というところを平然と出してくる。その度胸たるや凡人はただ呆れるのみ。呆れて思わず笑ってしまう。何というパワーでしょう!

全世界を股にかけているくせに、家族、ママさん友達、身近な人々をこよなく愛して大事にしている。照れ屋さんで恥を知っているから、作品の中で垂れ流すような真似は決してしないけれど、その愛は深い。深すぎて底無し沼のようだ。西原氏のマンガにはいつも泣かされてしまう。ギャグで大笑いして油断していると「そ、そんな痛いところを、せ、切ないところをつかないでくれ~。」と、自分の中の生乾きの傷をいきなりつつかれる。痛いんだよ~これが。でも治療が痛みを伴うのと一緒で、痛みの後はその傷が持っていたどんよりとした熱や腫れが引いていく。気持ちがいい。

西原氏はたぶん余人には想像もできないような修羅場を潜り抜けてきた人なんだと思う。普通なら耐えられないような傷も痛みも負ってきてそれを乗り越えてきた人なのだと思う。そういう彼女が描く子育てマンガ。

凄いよー!!!

「いまどきの母親は云々~」とかほざく何も知らない「良識ある」人々よ。

これを読んでからいえ。

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コメント

あっははー!
バイブルですね
この辺は工場だらけですが、中で働く男や女”絶対おかしいよな”という中の世界、ミサイル撃ち込まれても尊大に構えられても利益最優先の価値観、みんな目が死んでいきます
出稼ぎのブラジル人も最初唖然、頑張ってと盛んに立ち回りますが五年もするとやはり目が、、はは
そんな連中が食い入るようにはまる作家が”西原さん”です
深刻さもいくらか消え、具体的にどうしようかという方向に向かうことの出来る漫画
一言で言うなら”稀有”しかし漫画これがおかしいですよね
どう考えてもマイルドな奴隷労働なんですが、そこからはいでるに一役買うのが漫画
面白い世の中になりました
麻生大臣は漫画が好きらしいですが、たしか金鉱が、、そこまでの人が一番楽しみとしているのが漫画、、、
ちなみに僕はゲーマーとして、憎しみ怒りからほぼ解脱することに
近づいてます
いやぁ分かんないもんですね

ほほ―――う。ブラジルの方たちが西原先生のマンガを。すばらしい。あのぶっとび方は世界規模ですよね。ちらちら見えるセンチメンタリズムも言語を越えて普遍性のあるものだと思います。

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