「獣の奏者Ⅳ・完結編」(上橋菜穂子著・講談社)を読んでしまいました。雪が降る前に図書館から借りてきたのです。
もう、ね。口利けないぐらい感動した。
なんでかな。上橋さんの物語はなんでこんなに魂を揺さぶるのかな。心臓を鷲づかみにされるのかな。「精霊の守リ人」からずっと、揺さぶられまくり。
この沸き立つ心をなんとかしなくちゃ、どうにもこうにも収まらない。絵にでも描いて吐き出さなきゃ、涙ばかりがでてきて日常生活が送れない。
ここで詳しい結末は書けないけれど、イアルさん。むちゃくちゃかっこよかったッす。「仔犬ちゃん」なんつって悪かったっす。
すごく悲しい結末だけれど、優しく力強い終わり方でもありました。
エリンとは違うやりかたで王獣に一生をささげた人。
真面目で優秀で研究熱心で仕事ができる人なのに、王都のラザル学舎ではなく、辺境のカザルム学舎の教導師長を勤めている。
たぶん彼女が女だったからなんだろうな。だから優秀な研究者でも主流に乗れなかった。
腹が煮える理不尽な思いもいっぱいしてきただろうけれど、王獣の餌代にも事欠くカザルム保護場と学舎を切り回しております。有能。
彼女がジョウンから引き継いでエリンの保護者になったってのは大きいよね。ジョウンとはなにやら訳ありっぽいし、エリンは血がつながっていなくてもいわばジョウンと二人で育てた娘のようなものだよな。
エリンの最大の理解者で、エリンがリランをなんとかかんとか手なづけて飼育に成功していくのがわがことのようにうれしかったと思うんだ。
なによりリランとエクが交合飛翔して子供を作ったとき。ほんっとうにうれしかっただろうな。「飼育下で繁殖に成功した」ってことだもん。
トキやコウノトリやジャイアントパンダを例に引くまでも無く、野生動物の飼育下繁殖はとんでもなく難しい。ましてや王獣は何百年も成功してないんだよ。それを自分の保護場で自分の娘みたいなエリンが成し遂げてくれた。人生も半ばを過ぎてこんな喜びが訪れるとは夢にも思ってなかったろう。
となってみると、研究の傍流にいたことは結果的にラッキーだったってことだよね。人生ってそういうことよくあるよな。もちろん彼女のお人柄だからこそジョウンはエリンを預けたんだけど。
エリンを思うあまりシビアなことも言う。一度目にエリンがリランに襲われたとき「遺書を書きなさい。何かあったときに自分の馬鹿さがそれを招いたのだとみなに知らしめるように。」と一見冷たく言うのだけれど、その言葉の裏の深い愛情を思うと涙が出た。
二回目に襲われて指を失ったとき、エリンのベッドの上に指隠しのミトンをそっと置いてくれる。これも泣かせる。
冷静で思慮深くありながら、情の深い優しい女性。
エサル先生の存在がこの物語に深みを与えてくれてると思うんだ。
「獣の奏者」がアニメ化されたことは知っていました。でも、見るのがためらわれたの。
だってさ、「10歳の女の子の目の前で母親が爬虫類(?)に喰い殺される(しかも処刑)」話であり、「女主人公も自分が育てている獣に二度も襲われて、指三本喰いちぎられる話」なんだよ。
「ほんとにそれ、アニメでやる覚悟あるのか?」ちょっと疑いました。
「そんな残酷なこと子供に見せるな」と言っているのではありません。わたくし自身は「それを子供に見せなくてどうする?」と思ってます。
それらのエピソードは「獣の奏者」という物語の中では必要不可欠なエピソードであり、重要なテーマを表現する手段です。それを「青少年に与える影響」やら「公序良俗」とやらで自主規制して、「表現できないならアニメ化するな。」ということです。
いやあ、たまげたね。NHK教育の本気と底力おそるべし。
エリンの左手指はごまかされること無くきっちり喰いちぎられました。
あのさ、王獣じゃなくても動物は怖いもんなんだよ。ヒューマニズムなんて関係ないし。「無条件でなかよし」になってくれるほど人間に都合のいいもんじゃない。
王獣は「犬の顔をした翼持つ大型獣」だけど、そこらの小型や中型の犬だって怖いんだ。底には野生が流れている。
二ヶ月前、あたしゃ、飼い犬のアンズ(雑種・10ヶ月・雌)が隣の畑の狸罠にかかったのを助けようとして、彼女にしこたま噛まれました。アンズはいつもおとなしい犬で、噛み癖もまったく無く、あたしがいうのもなんだけれどよく懐いてくれてます。
でも、そんな彼女でも罠の痛みと怖さで半狂乱で訳わからんくなってなって、飼い主に噛みつきまくるんです。特にひどかったのが右顎と左手親指と右手薬指で、右顎は化膿して敗血症になりかけ、左親指のつめはまだ割れたまま、右薬指は神経までいっちゃって痺れたまま。
その直後は、実はアンズに近寄るのが怖かった。「まさかアンズが」と思ってたから。彼女が見せた剥き出しの野生は、圧倒的な迫力でとても怖かった。(よくあれを抑えて罠から助け出せたなあ。そこは夢中で覚えてない。)
でも、アンズが好きだから、一緒に暮らしたいから、包帯ぐるぐる巻きの手で散歩のリードを握った。「動物を飼う」ってのはそういうことだと思うから。
子供にそういうこと見せないでどうする?動物はぬいぐるみやロボットじゃない。「かわいいだけのもの、簡単に人間がコントロールできるもの。」とだけしか表現しないものを、わたくしは嫌悪する。憎む。
「獣の奏者エリン」で、場合によっては非難ごうごうになりかねないエピソードを、よくぞ表現してくれたと思います。
まだこの国の表現は死んじゃいない。
さて、「エリン祭り」と称しながらサブキャラカッポウの恋愛イベントばかりとりあげ、「主役はどうしたんだ主役は?」なんでございます。
ふっふっふっふっふ(不敵な笑い)ご安心召されよ。
実はですね続編の「獣の奏者Ⅲ探求編」(上橋菜穂子著・講談社)を読んでいたら、下記の文章にぶつかりましてね、はなぢ出るほど興奮しとったんです。
『――――薄暗い部屋の中に、エリンはいた。
――――こんなことをしては、だめだ・・・・・・・。
うめくような声とともに、息が耳にかかる。
――――おれたちの子は、初めから、惨い重荷を背負うことになる。』
・・・・・・・・・・・・・・・!!!!
エ、エリン!!薄暗い部屋でな、何をしてるの!!?
はあッはあッはあッはあッ、落ち着けッ
ごくん。(水を飲む)ふーーーーーッ。
お相手は堅き盾(セザン)一の腕利き真王つきボディーガード、「神速の」イアルさんでございます。アニメ版の最後の最後にエリンの子のちびっこジェシが出てきましたが、彼が父親でございます。
もう、ね、エリンったらイアルさんの隠れ家を、イアルさんの友達のカイルさんに聞き出して押しかけて挙句の果てに押し倒したらしいです。そんでもってイアルさんにンなこといわれても構わずことを続けたらしいです(泣きながらだけど)。要するに手籠めにしたってことっすね。
やるなあ~~~~。
相手は指一本で人を殺せる戦闘スキルを持った武人、お前に怖いものはないのか?エリン?
・・・・・・・・・・・・ないんだろうなあ。
ちょいと「獣の奏者」世界の戦闘能力比較を下記の図に描いてみました。
人間界じゃ「神速の」イアルも闘蛇にとってはただのエサ。その闘蛇をエサにするのが王獣。
でもエリンは闘蛇を指笛でコントロールし、王獣を竪琴でコントロールする「獣の奏者」。その視点から見るとイアルなど仔犬ちゃんも同然ではないですか。
ぜんぜん怖くないんだろうなあ~~。
だからイアルも惚れたわけでして。
いや、「獣の奏者Ⅲ」ではイアルさん大活躍!!
息子を追っ手からきっちり守り、エリンを濁流の中から助け上げているし、なにより物事に猪突猛進するエリンを静かにたしなめる冷静さがあります。いい旦那さんだよなあ~~。ほんとこの二人もナイスカッポウだわ。
Ⅲの終わりでイアルさんが「闘蛇乗りになる」宣言をして、エリンを驚かせているけれど、どうなるの?この先。エリンとイアルと息子ジェシの家族と王獣たちに平穏な未来はやってくるの?
早く続きが見たいよう。Ⅳの予約順番が早く回ってこないかな?
上橋菜穂子さんの物語の中では女たちがみんな意志的なんだけれど、最初「セイミヤ様は違うのかな?」と思ってました。「世間知らずの深窓のお姫様」キャラかなと。
でもね、地を覆いつくす大公軍の闘蛇と対峙して、シュナンのプロポーズを受け入れる決意をしながら「でも、戦を嫌う心は無くさない。」と誓い、シュナンに向かって拳を握りながら言うセリフがかっこよかった。
「わたくしとシュナンの間に産まれる子は、この国のもっとも聖なるものと穢れたるものを背負うこととなる。」
「でも、その手に自由と意思を持って自分の意思で行く道を決めることでしょう」
かっこいい~~~~!!!
それにしても、「王族の結婚」ってたいへんね~~。
「プロポーズのお返事をする」ってだけで、夜明け前の雪の中を楽隊は鳴らしまくるわ踊り隊は踊りまくるわ、大地を闘蛇軍が埋め尽くすわ(つまりこの闘蛇軍が『結納の品』であるよ)、王獣は飛ぶわ人死にはでるわ(しかも多数)、たいへんたいへん。
しかも「セイミヤ様がイエスなら青い旗を掲げる」ってんで、その青い旗を掲げるまでに一騒動も二騒動もあるし。
でも青い旗が掲げられるのを見て、うれしさのあまり闘蛇から飛び降りて駆け寄ろうとしたシュナン君はかあいかったなあ~。
原作の続編「獣の奏者Ⅲ探求編」をやっと図書館で借りることができました。(予約でいっぱいなんだわ)
10年後シュナンとセイミヤの間には一男一女とお腹にも一人入っていて妊娠中。まだまだ子供作りそうだな、この二人。
「黒髪さらさら真ん中わけ坊ちゃん刈り」 キャラには昔から弱いんだよ。
ついでに言うなら「戦闘機乗り」とか「戦車乗り」キャラにも弱いんだよ。
笑うんなら、笑いやがれっとくらあ。
だからいい男よりどりみどりの「獣の奏者エリン」男キャラのなかで、一番シュナン様が好き。
あの髪型。そして闘蛇乗り(いわば戦車乗りだ)。一番の男前でありながらセイミヤ様一筋。
にもかかわらず「戦うか、結婚するか選べ」などと「それで口説いてるつもりかァ!!」というとんでもない迫り方をして、セイミヤ様を泣かせちゃう不器用さ。好きだわァ。
もっともセイミヤ様が「ほんとうに深窓のお姫様かァ?」というような力強いタマだったことが最後の二話でわかってくるので、この二人は似合いのカップルであるよ。
「ナイチンゲールの沈黙」にはいい男もいっぱいですが、いい女もいっぱいです。
特にショックを受けたのが小児病棟の猫田師長のキャラ設定。日がな一日窓際でうつらうつらしてたり、あまつさえ「昼寝(シェスタ)」と称して勤務時間内に看護師控え室で昼寝してる師長なんてあり?!
しかも、それが次期総師長の最有力候補というぐらい、優秀でできる師長で、しかも「よく見りゃ美人」だという。
素人にはとても考えつかない設定だよなあ。これは海堂氏が現役の勤務医だからこそ説得力あるキャラでしょう。きっと、海堂氏の周りにほんとうにこんな看護師さんがいるのね。
部下の看護師たちから「千里眼を持つ」と恐れられる洞察力。足音を立てずに動き、物事の読みに長け、部下はもちろん教授であろうが師匠であろうが目的のためにこき使い、しかもいざというときの胆力たるやライオンの如し。
むちゃくちゃカッコいいおばさん。かくありたきものだけれどあたしには無理。なので、ますます憧れます。
海堂尊ワールドは一度はまると抜けられません。いまでてる海堂モノは全部読んでます。
「チーム・バチスタの栄光」の主役、田口・白鳥コンビはもちろん、「あ、この人あれにでてた」「あ、あの人のうわさが出てる」と登場人物が多岐にわたりあちこちにでまくり、いまや大河物語とでもいうべき趣になってます。
話として一番好きなのは「ナイチンゲールの沈黙」。「歌によるシネセジア能力」というちょっぴりSF仕立てと殺人事件というミステリー仕立て、それになにより次から次へと老若職種を問わず惜しげもなくいい男がでてくる贅沢さがたまらんのです。
中でも準主役な牧村端人の魅力は出色。まだ中学生ながら警察庁・厚生労働省のキャリアを向こうにまわし、自分の大事なものを守るために捨て身で戦う姿はカッコいい。人間のくずとでもいうべき父親は殺され、難病網膜芽腫という難病で目の摘出手術をしなければならないという事実も彼の悲劇性を際立たせます。
「夢見る黄金地球儀」という桜宮を舞台にしたおちゃらけ発明モノ(これも大好き!!こういう軽いタッチも素敵)に、青年になった端人がでてきて、びっくり。しかもすごくいい男になってました。
最近のコメント