椿屋敷のお客様

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2010年1月12日 (火)

エサル先生の喜び

100112   エサル先生も好きなんだよなあ。

エリンとは違うやりかたで王獣に一生をささげた人。

真面目で優秀で研究熱心で仕事ができる人なのに、王都のラザル学舎ではなく、辺境のカザルム学舎の教導師長を勤めている。

たぶん彼女が女だったからなんだろうな。だから優秀な研究者でも主流に乗れなかった。

腹が煮える理不尽な思いもいっぱいしてきただろうけれど、王獣の餌代にも事欠くカザルム保護場と学舎を切り回しております。有能。

彼女がジョウンから引き継いでエリンの保護者になったってのは大きいよね。ジョウンとはなにやら訳ありっぽいし、エリンは血がつながっていなくてもいわばジョウンと二人で育てた娘のようなものだよな。

エリンの最大の理解者で、エリンがリランをなんとかかんとか手なづけて飼育に成功していくのがわがことのようにうれしかったと思うんだ。

なによりリランとエクが交合飛翔して子供を作ったとき。ほんっとうにうれしかっただろうな。「飼育下で繁殖に成功した」ってことだもん。

トキやコウノトリやジャイアントパンダを例に引くまでも無く、野生動物の飼育下繁殖はとんでもなく難しい。ましてや王獣は何百年も成功してないんだよ。それを自分の保護場で自分の娘みたいなエリンが成し遂げてくれた。人生も半ばを過ぎてこんな喜びが訪れるとは夢にも思ってなかったろう。

となってみると、研究の傍流にいたことは結果的にラッキーだったってことだよね。人生ってそういうことよくあるよな。もちろん彼女のお人柄だからこそジョウンはエリンを預けたんだけど。

エリンを思うあまりシビアなことも言う。一度目にエリンがリランに襲われたとき「遺書を書きなさい。何かあったときに自分の馬鹿さがそれを招いたのだとみなに知らしめるように。」と一見冷たく言うのだけれど、その言葉の裏の深い愛情を思うと涙が出た。

二回目に襲われて指を失ったとき、エリンのベッドの上に指隠しのミトンをそっと置いてくれる。これも泣かせる。

冷静で思慮深くありながら、情の深い優しい女性。

エサル先生の存在がこの物語に深みを与えてくれてると思うんだ。

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