椿屋敷のお客様

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2005年11月 2日 (水)

花の下にて

Nec_0028_1 「花の下にて春死なむ」という西行の句が大好きで、ご自分も「我が家の桜の木の花の下で死にたいです。」とおっしゃっていた93歳のお知りあいのご婦人が亡くなりました。

一種の傑物で、徒手空拳の旦那さんを内助の功で国会議員までになさしめて、旦那さん亡き後も二人で建てた大きな屋敷のお庭の、何十年もかけて集めた季節ごとに咲く花々をこよなく愛しておられました。特に終戦直後、建物を建てるより先に木市で買ってきて植えたのだという大きな桜の木を愛しておられて、桜が咲くとおにぎりとお煮しめと焼酎を何十人分も用意して、客を招いて花見の宴を毎年開いておられました。「なんとも贅沢で風流な催しですね。」と言うと、いつも「『花の下にて春死なむ』というでしょう?そういう死に方がしたいのですよ。」と豪快に笑っておっしゃってました。「生きるのは難しいですが、死ぬのはもっと難しいですよ。あなたもわたしの年になったらわかるでしょう。」

今は桜の季節じゃないですよ。来年もあの宴を開いてくださるのじゃなかったのですか?あれほど愛したお庭でなく病院で臨終を迎えられたのです。あんな傑物でも思い通りにはいかなかった。本当に死ぬのは難しいのですね。しかし、最後までしゃんとして、大往生には間違いありませんでした。さまざまなこと色々な教え、はっきりと心に残っています。今は心よりご冥福をお祈りいたします。

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コメント

お話を聞かせてもらったあのご婦人ですね。亡くなられたのですか… 
でも春さんはいろんなことを教えてもらってよかったですね。縁があったのでしょうね。
人間死ぬまでなんですよね。正直に生きたいと思います。

clusterさん、ありがとうございます。また不死鳥のようによみがえってこられるのではと思っていたのですが・・・。お会いできてほんと良かったです。人間死ぬまでですよね―――。

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