水晶
「寒~い寒いぶるぶるぶる」という、内容ばかりが続く今日この頃。12月の積雪としては、鹿児島気象台始まって以来の積雪量だということです。
雪ですら慣れないのに、氷河とか万年雪とかどんな世界なのでしょうね。おそろしく透き通って青い青い水晶のような場所。19世紀のボヘミアの作家シュティフターの短編集「石さまざま」の中に、「水晶」という美しくも荘厳な傑作短編があります。
クリスマスイブの夜、ボヘミアの山岳地帯の小さな谷間の村の幼い兄妹が、山の麓の祖父母の家から谷に帰る途中で道に迷ってしまい、不毛の氷河で遭難してしまいます。幼いなりに山育ちの二人は、知恵をあわせ力をあわせて、大人でも遭難死するような(わたくしのような寒かごろは一発ですわ)過酷な状況を乗り切り、奇跡のような山のクリスマスイブの光(オーロラでしょうか?)を見て、翌朝生還するというお話。
日本ではあまりなじみのないボヘミアの山岳地帯のつつましくも豊かな暮らしぶりや、侠気のある少年の父親(山男で靴作り師)や祖父(資産家の染物屋)たちの無口だけれど質実な性格、その強さを受け継いだ少年の知恵と勇気と優しさ、けなげでかわいらしい妹が、兄を信頼しきって発する「そうよ、コンラート!(ヤー、コンラート)」という言葉の響きの美しさ。本当に大好きなお話です。
兄妹に祖母が持たせた子牛の皮のランドセルの中身が、質素なんだけれどめちゃくちゃおいしそうでした。ハタンキョウのキャンディー。ふかふかの白パン。そして特別に濃く淹れた「体の芯からほかほかと暖まってくる」コーヒー。結局遭難した兄妹は、このコーヒーを少しづつ飲むことで、睡魔に抗い凍死しなくて済んだのでした。
翌朝、奇跡の生還をした兄妹を父の村と祖父の村から協力して出ていた捜索隊のメンバーが見つけ、そののろしを見た教会の神父様が、延期していたクリスマスイブのミサをあげ、下山の途中山々に透き通った鐘の音が響き渡る・・・・・
「それまで、上の村の子でも下の村の子でもなかった二人は、今やまぎれもなくふたつの村の子でした。」娘の結婚に反対で、しっくりいってなかった祖父の染物師と父の靴作り師も、自然に和解し、「奇跡の夜を境にふたつの村はひとつの村のように行き来をするようになりました」
「ホワイトクリスマス」という単語を聞くと、いつもこのお話を思います。
きれいな、心洗われるようなお話ですね。ぜひ読んでみたい!
児童文学や、子供が主人公の短編には、水晶のような明るく切ない輝きをもって、人の胸打つ作品が沢山あるように思います。
投稿: 麦の花 | 2005年12月23日 (金) 08時18分
おお、おはようございます、麦の花さん!年末お忙しいでしょうがお互い気をつけましょうです。そうなんですよ、綺麗な胸打つお話なんすよ!麦の花さんのお薦めも教えてください。
投稿: 春 | 2005年12月23日 (金) 08時41分