椿屋敷のお客様

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2006年5月20日 (土)

秘密(トップ・シークレット)

Nec_0007_15 はなはだ俗物なもので、人には言えないようなことを脳内でいろいろ考えております。まあ、欲望にキリはございませんな。

それでも人間の脳の表面に出てくる意識はわずか1%。残りの99%は無意識として格納され、睡眠時に夢として出てくることがある以外は本人にすら生涯意識されることはありません。これもまたある意味恐ろしいことです。よく自己開発セミナーとか、カルト宗教とかであるのが「本当の自分を見つけよう!」というキャッチフレーズ。あれなあ。ああいうのにホイホイ乗る人、怖くないのか?『「嘘の自分」と「本当の自分」がある』という考え方もナゾですが、「本当の自分」とやらがそんなイイモノだと、なぜそんなに無邪気に信じることができるのでしょう?ナゾです。

「秘密(トップ・シークレット)」(既刊2巻・清水玲子著・白泉社)です。

――――近未来、人類は死体の脳からその脳が見た情報をMRIスキャナーという装置で解析できるようになる。日本でも科学警察研究所に「法医第九研究所」として主に犯罪関係者の脳から情報を取り出すための施設が開設される。新卒でそこに配属された青二才の青木と、そこの室長として一目置かれる童顔のエリート薪警視正。薪は「少年28人殺し」として有名な貝塚という殺人犯の脳を見ながら生き残った捜査員として有名だ。というのも貝塚の脳を見た捜査員は全員発狂したり自殺したりしてしまったからだ。凶悪な人殺しの所業を記憶した脳の情報はそれを見るものをすら狂気に陥れるほど強烈な負の圧力を持つ。おりしも8人の少年の連続自殺事件があり、その捜査で青木もMRIスキャナーを使用するようになるが、死者の脳の見る世界は想像を絶する恐ろしさ。薪から職換えをすすめられながらもめげずに勤める青木だが、その少年自殺事件と貝塚の事件が思わぬところでつながって・・・・・

清水玲子氏は、もうずっとLaLaで一種独特のSFマンガを描いてきた人で、「月の子」とか「輝夜姫」とか美しい絵で他人の追随を許さない強固な世界を築いています。正直言って好きな作家さんではありません。美しいけれどなんともいえず暗いの。読んだ後で気が滅入るの。

でも、絶対に無視できない。「好きじゃない」とかいいながら全部作品持ってるし。なんというか「残り99%の脳」が考えていそうなことを、平気でだしてくる人なの。「それもありか」と無理やり納得させられてしまう暗い快感をついてくるの。ううううむ。ただものじゃない。でもよほど心のコンディションが良くないと読めませんね。そういう清水氏の「とんでもなく美しい絵柄にとんでもなく暗くエロくグロい話」という特質に、この「秘密(トップ・シークレット)」はむちゃくちゃ合っていると思います。少女マンガ史に残る傑作であることはまちがいありません

ジャンキーやアルコール依存症が「いけない、いけない」と思いながらついつい薬やアルコールに手を出すように、ついつい読んでしまって止められなくなる。しかもおもしろい。そういう危険なマンガです。

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コメント

春さんこんばんわー。
清水れーこを出されたら飛び出さずにはいられません。
私も春さんとほぼ同じイメージを彼女の作品に感じています。
ですから、好きなんですけど自分の本棚には置けないんですよね、「気がめいる」ので(爆)
でもすごく「好きな」作家です。詩人の萩原朔太郎と同じかな。私の中では。

あきこさん、おはようございますー。
萩原朔太郎とはいい得て妙かも。本棚には秘密しか置いてません。あとは倉庫に入れてます。でも、うっかり見つけると全部読むまで止まらないの。危険。

おはようございます。
「何考えているの?あなたの頭の中見てみたい・・・」なんて思うこともありますが、次元が違うのですね。この手の読み物は苦手ですが、人の思考の多種多様さを感じさせられます。

人の思考って「見えたらいいなあ」と思うこともありますが、結局は見えないほうが幸せだろうな、と思います。諦めがつきます。

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