沈黙の艦隊
”The Silent Service”「沈黙の艦隊」(全32巻・かわぐちかいじ著・講談社)でございます。
1巻初版は1989年ですがな!もうそんなになるのか!
今だから恥をしのんで申し上げますが、当時わたくしの周りでは「パッシブ・ソナー」とか「ピンガーを打て!」とか「圧壊深度」とかこのマンガで使われているサブマリン用語を使うのが流行りました。若気の至りというものです。それほど新鮮でかっこよく感じた「深海で繰り広げられる潜水艦同士の激闘の世界」でした。出てくる登場人物は徹底して男(しかもプロ)ばっかだし。
海江田の戦略が痺れるほどカッコよかった。世界中の海でアメリカや旧ソ連の精鋭を敵に回して戦うんだけれど、「ええええ?そんな手があったのか!!」という計算されつくして奇手奇策にすら見える作戦の連続。こんな作戦考え付く作者のかわぐちかいじ氏ほんとただモンじゃねえと思ったもん。
デビュー海戦が高知県沖で、次が南太平洋、米第7艦隊を敵に回しての大立ち回りなんだけど、なんとね、潜水艦の中でモーツァルトの『ジュピター』をガンガン鳴らしながら戦うんだよ!何考えてんだよ?
それは実は海江田が巧妙に計算しつくした罠で、物量に勝る第7艦隊はころっと引っかかってその後の「やまと」の航海を許してしまうんだけれどね。それから先も「こんだあ、いくら『やまと』でも突破は無理じゃろ」という危機死闘の連続。特にベイツ兄弟との北極海海戦と米大西洋艦隊とのNY沖海戦はすごかったのう!
登場人物があまりにも多すぎ、多岐にわたりすぎて誰が好きとかもういえないぐらいなんだけれど。まあ、チェックポイントは海江田の同期にして「たつなみ」艦長深町の海江田への執着ぶりとか、それに答える海江田も「深町ならかわす」とかいう信頼ぶりとか、深町の副長速水が妙にカマっぽいとか、やっぱあたし職人好きだわ南波水測長とか、こういう地味タイプも好みなのよ「手旗信号で艦隊間連絡」沼田司令とか、海上自衛隊のメンバーがおもしろいかな。
あと当時の政治状況を反映した粘っこい顔の政治家達が中盤以降続々登場するんだけど、右も左も中道もなかなかのおもしろさでした。「こんな優秀な連中がほんまに政治家におるんかよ。」とは、当時も思いましたし今も思いますけれどね。
ただねえ・・・・ラストはねえ・・・・・。
これしかやはり決着のつけようがなかったかな。まあ、他に考えようはないか。いまだに納得がいくような、そうでないような・・・・・。傑作ってのはそういうものかも知れませんのですがね。
そう、かわぐちかいじ氏畢生の傑作だと思います。今後もしかしてこれを超えるものを描くかもしれないけれど、少なくとも今連載中の「ジパング」よりはこっちのほうが好きだな。「あのときこうしていれば」の「たられば歴史モノ(特に第二次世界大戦モノ)」はどうしても後出しジャンケンみたいで。必死で未来を語ろうとしている「沈黙の艦隊」のほうが、いい。あれから世界情勢はすっかり様変わりしてしまったけれど、今でもその評価は変わりません。
お♪またまた面白い作品です
核弾頭を搭載した原潜は最強の軍事力であり
国家でもある、そんな
レッドオクトーバな船を彷彿させますが
どっちが先なんてどうでもいいですね
おもしろければいいんです
ちなみに
短信音(ping)という単語は
ブログ用語でもありますね
投稿: ぶれいず | 2007年11月21日 (水) 22時08分
そうです。設定が似ているようでもお話の展開はまったく違います。おもしろければいいのです。
んで、おもしろさという点ではレッドオクトーバーな大雑把な話よりこちらのほうに俄然軍配を上げますです、はい。
投稿: 春 | 2007年11月22日 (木) 06時26分