天と地の守り人
「守り人シリーズ」の最終話、「天と地の守り人三部作」(上橋菜穂子著・偕成社)です!
ああ~~~ッ、読み終わってしまったよ!予約を待っているのは長かったのに読むのはあっという間だったよ。
ラストまで期待を裏切ることのないすばらしい話でした。ああ、もう褒める言葉が足りない。
バルサがタンダがチャグムがトロガイがシュガが、ジンや帝やラウルやアスラやチキサなんかに至るまで、でてくるもの皆が収まるべき場所に収まりました。なんと言う感動。
とうとうバルサがタンダを「つれあいだ」と認めました。壊疽を起こして瀕死のタンダを必死で介抱するバルサ。そして回復したタンダ、とこの物語でははじめての静かなくちづけ。ああ、こんな心にしみる愛の表現は久しぶりでした。よかったね、バルサ、タンダ。
そしてなによりチャグム。「精霊の守り人」のときのガキンチョが、こんなに成長してしまうとは。ほんとうに苦労したんだよね・・・・・・。「蒼路の旅人」で夜の海に身を投じての危険な夜間遠泳に始まり、ロタ、カンバルと命がけの同盟交渉、そして見事同盟を果たしてからも大国タルシュとの壮絶な戦い。こうやって母国を必死で救おうとして帰ってきたチャグムに心無い仕打ちをする父帝とその側近達。きみの苦労は涙なくしては読めません。
とうとう、なりたくもない帝になってしまうけれど、きみなら大丈夫。閉ざされた奥津城のような宮から、いつか必ず人間として出ることができるでしょう。それを予感させる希望に満ち満ちたラスト。
よかったなあ・・・・・・。
それにしても上橋氏、ファンタジーの要である異世界の世界観のイメージも見事ですが、現実の人間達の国政や国家間の連衡、交渉等についての見識や表現も見事。大国タルシュが新ヨゴに攻め入ったときが、ちょうどナユグ(異世界)の春の影響で雪解け水の大洪水が起こり、その気候をうまく利用してタルシュの軍勢を破る新ヨゴ軍。この戦略も見事。うまいこと異世界イメージと現実のバランスをとっています。
ああそういえば「大洪水伝説」って、よくいろんな民族の神話にあるんでしたね。「大洪水がすべてを押し流し浄化した後に、新たなる希望が芽生える」のは、世界中の神話にある話。文化人類学者の上橋氏のこと、もちろんそこらを踏まえてこの希望あるラストを持ってきてくれたのでしょう。ああ、言葉でこうやって語るのももどかしい。
つくづく「児童文学」というジャンル分けは無意味。この感動は子供でも大人でも、いや、大人であればあるだけ深く味わうことができるでしょう。大人にこそ読んでもらいたい。ぜひ。って、偕成社の回し者じゃないんだけれど。
次はなんと、春から予約していた「一瞬の風になれ」が回ってきました。やったーーーー!!宮部みゆき氏、あさのあつこ氏、そしてこの上橋菜穂子氏大絶賛!これは心して読まずばなりますまい。
こんにちは。
守り人シリーズは、何をかくそう椿屋敷さんのブログがきっかけで読みました。
本当によく出来た物語ですね。
最終話でそれぞれ収まるところに収まったようですが、またこれが始まりにもなりそうで。
上橋先生にはいつかまた物語を再開して頂きたいものです。
投稿: たーさん | 2007年11月28日 (水) 13時55分
春さん、こんばんは。
私も、まさに今日、予約していた「天と地・・・」3部作を借りてきました♪
ちょっと待ち時間があった時に、第1部のサワリだけ読んだのですが
早くも心を鷲づかみにされています。
シリーズ物って、読み進めるうちにマンネリ化することが多々ありますが、
この守り人シリーズは、どんどん作者の技量がUPしてる感じがします。
この3部作が最終章とのことですが、それだけに
読むのが楽しみなような、惜しいような・・・(^_^;)
いずれにしろ、今夜からまた楽しい読書タイム再開です♪
残るは「蒼路の旅人」1冊だけだなぁ。。。
投稿: totto* | 2007年11月28日 (水) 22時01分
こんばんは。
たーさん、
うわああ、読んでくださってありがとうございます。なんだか紹介した本を読んでくださるととてもうれしいです!!
うんうん、また物語が始まるといいなあ。読みたいなあ。
totto*さん、
いつも、ありがとうございます。totto+さんの読み方はすごく深くて、いつも「ああ、そういう見方もあるなあ」とうなづくことしきりです。
「心をわしづかみ」うん、まさしくそれ。「守り人シリーズ」にはそういう力があるんです。おっしゃるように後半になればなるほど技量と世界観がアップしていて、読んでて決して飽きないんですよ。
こういう小説が読める社会でよかったなあ。しかも日本語だし。
「蒼路の旅人」もいいですよおお。
投稿: 春 | 2007年11月29日 (木) 19時40分