椿屋敷のお客様

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2008年7月 6日 (日)

ずるいよ家定様

Nec_0022 「・・・・・わしのような、力の無い、体の弱い男の妻となったこと、後悔は無いか?」

ずるいよ家定様。

そんな優しい声で、優しい目で、優しく抱いて、そんなこと言うなんて・・・・・・。

女は、一生、息ある限り、忘れることができなくなる。

これで、篤姫の後半生は決まってしまった。薩摩藩の女工作員としての今までとは180度違う方向に。

篤姫は典型的な薩摩女、男以上に頑固で一徹で理屈屋でハタ迷惑な行動力もあるくせに、男女の機微にはとことんウブで情が深い。これから彼女は突っ走るでしょう。とことんまで。

なによりも口惜しいのは、彼女がその後半生をこよなく幸福だと思うであろうこと。「末期の徳川家を守る」などという壮健なる男でもたいへんな仕事なのに。まだ20そこそこの妻にまかせて死んでしまうの?

ずるいよ。

でも、許してしまう。愛さずにはいられない。なんという説得力。

「篤姫-徳川の妻-」では、もう大泣き。NHK大河ドラマでまさかこんなに泣かされるとは思わなんだ。

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「篤姫」を大河ドラマでやると聞いたとき、危惧していたことがあります。後半生の篤姫が徳川家を守るその動機が、たとえば「お家を守る」とか「お国を守る」とか、トリガラみたいなおばさんが振り回す信念みたいなのだったらやだなあ。と。「愛も無かった結婚だったけれど、わたくしは賢婦人だから、夫亡き後もお家をちゃんと守りましてよ。」みたいな、さ。そんな女のお話見たくないよ。

なんといっても徳川家定の、今までの歴史上の評価がさ、「腺病質で体が弱く、奇行が多く、若死にした将軍」とさんざんでしょう?普通そんなウツケを愛せる?「どうするんだろ?」と思ってました。堺雅人の家定も、初登場は鴨を追っかけてるし。ますます「どうするんだろ?」

杞憂でした。

田淵久美子氏のシナリオはすばらしかった!家定の性格設定をこうもってくるか?歴史上の評価をすべて逆手にとって、鴨追いかけも餅焼きも駄々コネも、「ウツケ」と呼ばれた行動のすべてを「チャーミング」という要素に変換してしまいました。

また堺雅人が演じるとほんとに品がいいんだわ。そして思いもよらない瞬間に見せる誰よりも鋭いまなざし。この「どこまでが『ウツケ』で、どこからが『マコト』か」揺れるバランスが凄すぎ!次のアクションが読めなくて、もう家定様から目が離せなくなってしまいました。つくづく堺雅人ってうまい!

この家定なら、篤姫ならずとも惚れる!間違いない!篤姫は信念のためでなく愛のために、徳川家を守る。そういう話が見たかった!!よかった!

田淵=堺コンビが作り出した家定像は金字塔。もう、これ以上の家定は出てこないでしょう。というより今までの幕末モノで家定をこれほどクローズアップした話があったでしょうか?

幕末モノって、大声で国論を唱えながら諸国を巡るビッグマウス野郎か、なんでもかんでも斬ればいいと思ってる人殺し野郎ばかりが目立つでしょ?「お前ら家族はどうしとるんじゃ?」みたいな。

当たり前の話だけれど、あの時代にもそんな奴らばかりのはずがない。なのにそういう奴らばかりが喚き散らしている幕末モノに食傷していたところに、この「家族が一番大事」と臆面もなく言える家定様は衝撃でした。

ああ、でもついに来週、家定様身罷る模様。ああ、ついにこのときが・・・・・・・・。

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