椿屋敷のお客様

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2008年8月20日 (水)

いばら姫のいばら城

Nec_0036 グリム兄弟の説話集は「さすがゲルマン、肉食民族なり」と心底納得させてくれるグロとスプラッターのオンパレードです。

「灰かぶり」のお姉さまたちは、靴に合わせて踵やつま先を切り落として、馬車の中に滴り落ちる血で偽者がばれ、「スノーホワイト」のママハハ后はラストに焼けた鉄の靴を履かされて踊り狂い死ぬ。「白鳥の王子」の末の妹は墓場のイラクサで血みどろになりながら上着を編み、「ラブンツェル」の王子は塔から魔女に突き落とされていばらのとげで目を潰す。

そう、いばら。これなあ。「いばら姫」はもろに「いばらの城」で百年の眠りの呪いをかけられてるわけだけれど。知ってました?例の「キスして起こしてくれる王子様」の前に、何人もの男達がいばらに阻まれて、それどころかいばらの垣に囚われて、そのまま死んでしまった、っての。

怖いねえ。

初めて「グリム説話集」の完訳版を読んだとき、10代後半の生意気盛り「ケッ。たかだかいばらの刺くらいで大げさな。やっぱおとぎ話」とか思ってたけれど、最近じわじわと怖くなってきたんだな。

人の体は「たかだかいばらの刺」でも簡単に傷つく。目なんか突いたら簡単に潰れる。何年も何十年も人の手が入ってない野イバラやグミのような有刺植物のブッシュにはマジで入れない。うかつに足を踏み入れると四方八方から鋭い刺に容赦なく突き刺され、衣服も髪も揉みくちゃにされ、もがけばもがくほど囚われていく。本当にそうなんだな。

いや、たかだかうちの畑のグミを切り払ってて、思ったんだけれどね。あまりの手に負えなさに、ちょっと恐怖を覚えたんだな。手なんか軍手をしてても刺が立った痕だらけ。これがまた痛いんだ。

中世のドイツには「何百年も人の手が入ってない野イバラのブッシュ」が広大な森のそこかしこにあったのかもしれない。そこにうっかり迷い込んだ人間が出るに出られず衰弱死した死体、なんてのがゴロゴロしてたのかも。あたかも富士の樹海のように。

その伝承が何百年も伝わりグリム兄弟の耳に入って、こんな形で残されたのかも。

広大な「黒い森(シュヴァルツヴァルト)」の中のこれまた先の見えない一面の野イバラのブッシュ。刺に引っかかって風に揺れる古い人間の衣服と白骨。森が終わるときまで誰に省みられることもなく揺れ続ける・・・・・・・・・・

ねーーー?ちょっと怖いでしょ?

こういう細かい設定が「本当にあった」ことかもかもしれないのなら、他のいかにも残虐なグロシーンの数々も「本当にあった」のかも・・・・・・・と思い至り、さらに怖くなってきたのでありました。

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コメント

宗教画の「キリスト受難」の茨の冠なんかすごい棘のがありますし、昔ドイツの詩人がバラの棘で死んだとかいう話もありますから、これも相当な棘だったんでしょうね。
種類が違いますが柚子の棘もすごいですね。

ああ、「キリスト受難」のイバラも凄いですよね~。あれほんとにキリストの頭に突き刺さってるんですかね。痛そう。
柚子の棘も凄い。いつも実を採るとき刺す刺す。

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