椿屋敷のお客様

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2009年9月27日 (日)

白夜行

090927 ネットで「白夜行」を観てしまいました。東野圭吾の大傑作のドラマ化です。原作の小説が好きなので、あまり期待してなかったのですが・・・・・・

これが、また大傑作でした!!

山田孝之と綾瀬はるかは「世界の中心で愛を叫ぶ」に出てたそうですが、一生「世界の中心・・・・」を観る事はなくても「白夜行」は何度も観ることでしょう。すごくよかった

原作の小説では、主役の桐原亮司と唐沢雪穂の心理をほとんどといっていいほど描写してません。にもかかわらず周辺の証言と状況描写だけで、稀代の犯罪者二人の心理を手に取るようにわからせるという離れ業をやってのけているのです!!(すごいぞ、東野圭吾!!)

この緻密な物語をどうやってドラマ化するのかと思っていたら、なんと最初から最後まで山田演ずる亮司の一人称(ときどき雪穂のナレーションが入る)。小説とはまったく逆からのアプローチで、見事成功しています。

以下ネタばれ注意です。

物語はまだ11歳の二人がかわいらしい初恋に落ちるところから始まります。にもかかわらずお互いを守るためにそれぞれの親を殺すのです(雪穂は母親に売られていた。相手は亮司の父親)。二人はお互いをかばいあい、お互いだけを信じて周囲に嘘をつき続け、親殺しの罪を隠すために次々とダークな犯罪に手を染め、泥にまみれて無間地獄に落ちていく・・・・・・・・

(亮司をダークな世界に引っ張り込む松浦を渡部篤郎が演じちょります。見るからに小悪党。)

犯罪歴だけみるとモンスターのような亮司を、下膨れでのんびり情けない顔をした山田孝之が演ずると「ああ、罪というのは、ごくごく普通の人間でもちょっとしたきっかけで犯しうるものなのだな」と納得させてくれます。

この話の大きなテーマは「罪と罰」。「罪」ってのはね、罰せられたほうが楽なんだよ。「きちんとおつとめして綺麗な体になった」っていうでしょ?法の元に照らして「罪」に名を与え、その名にふさわしい刑罰を受ける、それによって浄化されるんだよ。罪びとはそれによって救われるんだよ。それを逃げたとき、待っているのは果てしなく嘘をつき続け、罪を犯し続けなければならない生き地獄・・・・・・・

八千草薫演ずる雪穂の養母が、二人に殺される前に「あんたのおるところはな、生き地獄いうんやで」と諭す。ああ、なんという深さ。

二人を執念で追う元刑事笹垣を武田鉄矢が演じていて(武田は嫌いだけれどこの役はよかった)「ひとつ嘘ついたら、ずっと嘘ばっかりつかんなならんのや」と。

「雪穂を幸せにする」ために、ありとあらゆる手をこうじ、死力の限りを尽くし、人生を捧げた亮司は、雪穂がブティックの二号店を出すのを見届けて、笹垣の制止を振り切り自殺。

後も振り返らず「泣かない・・・・・泣かない・・・・」と歩み去る雪穂だけれど、亮司が死んだ今、彼女にはもうかけらの真実も残されていない。

人間は、そんな状況に耐えられない。そんな人生に意味は無い。

強いはずだった雪穂は、結局廃人同様になり何もかもを失い失踪。

ラストで、二人にかかわり続けた図書館司書のおねえさんと笹垣が交わす「人生を捧げた方と、捧げられた方とどちらが幸福か。ー----捧げる方が楽で幸せなのである。捧げられて幸せになるのを強いられるのは苦行以外のなにものでもない。」という会話。(柏原崇演ずる篠塚が言った言葉。柏原崇も好き)

これも深かった。

2006年のドラマでそれほど視聴率はよくなかったようだけれど、どうしてかね。大傑作です。

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