ハリケーン
「野分」が「台風」のやまと言葉なら、大西洋岸のそれは「ハリケーン」。
台風14号とハリケーン「カトリーナ」でお亡くなりになった方々のご冥福と、行方不明の方々の一刻も早い救出をお祈りいたします。
たいへんな雨風であったが、我が家は無事。もっとも庭も畑もシッチャカメッチャカなので後始末を考えるとうんざりするが。後始末ができるぐらい無事で何よりであった。
台風で家にこもっている以外しょうがないとき、なぜかいつもスティーブン・キングを読んでしまう。去年の台風では「It」だったが、今年は「the Stand」である。(もちろん日本語訳。原書なぞ読めません)。大嵐の夜に、世界の破滅と救済をこれでもかこれでもかとばかりに俗な文章で綴っていくキングの小説はぴったりだ。
「the Stand」はカリフォルニアの軍事施設から致死率99.4%のインフルエンザウィルスが流出して(もちろん軍事用に開発されたもの)、2週間の間に合衆国全土が壊滅するところから話が始まっている。ここから話が始まるところが、実にキングらしいのだけれど。生き残った0.6%以下の人々が目を覆いたくなるような凄惨な現実から、ほとんど内戦に等しいような東と西の争いを経て、なんとか未来の希望を掴み取ろうとするところまでを、最初はSF、そしてファンタジー、ホラー、ロマンスあらゆる要素を総動員で描いている。なにせ上巻790p、下巻654pという「顔にかぶせて寝たら窒息するぞ」というほどの大冊なので、たとえ24時間嵐に閉じ込められても「もう読み終わってしまったよう。次は次は」と家を探し回らなければならない心配がない。
シニカルなキングは、合衆国の政府も軍隊もまったく信用していない。致死率99.4%というあまりにも危険なおもちゃを作り出しておきながら、その後始末がまったくできないどころかパニックを拡大していく無能を、一流のクールさで表現していく。こういう表現者が20年近くも「ホラーの帝王」として君臨し、ベストセラー作家であるところがアメリカという国の一筋縄でいかないところであると思う。今回の「カトリーナ」についてキングはどう思っているのであろうか?コメントを聞いてみたい。
「せやから京都議定書にサインせえゆうたやろ?ブッシュJr」と世界のあらゆる言語でツッコミがはいっているはずであるが・・・。はたしてキングは?
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