椿屋敷のお客様

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2006年4月22日 (土)

イヴの眠り

Nec_0018_8 うううううー――む。

「イヴの眠り」(全5巻・吉田秋生著・小学館)であります。

これに関しちゃ書こうかどうか迷ったのですが・・・。基本的にここで取り上げるマンガは「誉め」にしたいわけですよ。マンガ評論のための専門サイトではないし、だいたい人さまの作品をああだこうだと非難するのは好きでありません。(という言い訳からも、この作品への評価が伺われてしまいますね)、でも大好きな吉田秋生氏の最新作なので、結局取り上げずにはおれませんでした。

吉田秋生氏は、本当にデビュー当時から大好きで大好きで、ほぼ全作品を持っています。世紀の傑作「BANANA FISH」に夢中になった方は多いでしょう。わたくしもその一人です。「イヴの眠り」も「BANANA FISH」→「夜叉」から連なるシリーズです。

この3作品に共通してでてくるキャラが、シン・スウ・リン。NYのチャイナタウン出身で、「BANANA FISH」のアッシュ・リンクスと交流があり、「夜叉」の有末静と協力関係で、そして今回の「イヴの眠り」のヒーロー(であるはずの)烈(リエ)の親父さん。新中国のリーダーとして期待される実力者。金も人脈も世界規模で持ってます・・・・・って、ちびのストリートキッズからエライ出世したなあ、おい。

つくづく思いましたね。「吉田秋生氏は初代を描くことはうまいが、二代目は描けないんだなあ。」と。あるいはこうも言えるか。「巨大なる組織やシステムに反抗する一匹狼を描くことはうまいが、システムの側は描けない。」・・・・・いや、ひょっとしたらそもそも「物語」というのは「成り上がる初代」や「システムに反抗する一匹狼」のためにあるのかも知れません。

「BANANA FISH」も「夜叉」も、「徒手空拳のアッシュ・リンクスや有末静が、おのれの才覚や気力や人柄だけで人々を魅了し、巨大なる組織や国家に立ち向かう」話でした。何の後ろ盾もない彼らが、命がけで自分の愛するものや誇りを守ろうとする姿に、感動させられたわけです。

「イヴの眠り」は彼らの二代目の話です。ヒロインのアリサは静の実の娘。リエはシンの息子。敵役のスーグィは静のクローン。「夜叉」のテーマが「遺伝子操作で新人類の能力を持って産まれてしまった静の悲しみと戦い」だったので、そのままそのテーマが持ち越されているわけなのですが・・・・・。どうも、ヌルい。戦いが戦いに見えん。

なにせ、アリサにしろリエにしろ、功成り名遂げた親の子なので、バックに親の組織力も、見も蓋もない言い方をすれば銭もあるわけよ。対して敵役のスーグィのほうにあまりにも銭が無さ過ぎ。いつもの吉田マンガのパターンだとこっちのほうが主人公だよなあ・・・・・。

アリサも魅力的な美少女として描かれてるし、リエだってこういう育ちのいい男の子は大好きなんだけどなあ。どう――もシンや静の持つ組織力が彼らの魅力の発揮を邪魔してるような気がしてならん。

もったいないよなあ・・・・・。

それでもさすが吉田秋生氏、それなりにおもしろく読めたけれど(2巻ぐらいまでは特に)、全五巻の中で一番おもしろかったのは番外編の「ハウメアの娘」。アリサの母ルー・メイ・クアンと育ての父ケン・クロサキが戦乱のカンボジアで知り合う話。これだもん。これだってルー・メイ・クアンもケンも徒手空拳だからおもしろいんだよね。

「吉祥天女」を思い出しちゃった。あれも2巻ぐらいまではおもしろかった。小夜子が権力をもっちゃたらなんかつまらなくなったしな。吉田秋生氏、よっぽど権力と相性が悪いのかも。

とにかく次の作品に期待だ――――。

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