椿屋敷のお客様

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2006年12月21日 (木)

町長選挙

Nec_0035_19 泣かせるのは簡単で、怖がらせるのはテクニックがいる。でも笑わせるのが一番難しいですね。

「お笑い」というのは一番文化の違いがでてしまう感情じゃないでしょうか?第一言葉が違うと「今世紀最高のギャグ!」とかいわれてもぜんぜんおもしろくありません。アメリカン・ジョークってなにが面白いのかさっぱりわからん。フレンチ・エスプリも同じ。

関西にいたので「ヨシモト」をむちゃくちゃオモロイ!と感じますが、果たして日本全国の人々があれを面白いと感じることができるのでしょうか?大阪言葉のなんともいえないニュアンスがわからないと、ただただ「べたべたしてしつこくて気持ち悪い」ばかりなのではないかと・・・・・。「お笑い」は受け取る側の素地にも共通するものを求めるのです。

ああいうアクションが入ったお笑いでもこうなのですから、「活字で笑わして金を取る」というのはたいへんな離れ業であると思います。「笑える文章を書ける人」というのはすごいです。今、日本語で一番笑える文章が書ける人は「町長選挙」(文藝春秋社)の奥田英朗氏ではないでしょうか。

「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続く「精神科医・伊良部センセイシリーズ」の第三弾。前作「空中ブランコ」で直木賞をとっちゃったんだよね。

日本医師会のえらいさんの息子で、でぶっちょで、注射マニア、なに考えてるんだかさっぱりわからない大人子供の精神科医伊良部センセイは、あいかわらず元気。今日も今日とてピチピチミニの看護婦マユミちゃんを引き連れて「一挙手一投足をあげつらって非難される棺桶ノイローゼの球界のドン」や「ひらがなが書けなくなった小太りのIT長者」や「若作りが強迫観念になった女優」なんかを強引なマイペースに巻き込んで、いつの間にか治している伊良部センセイ。

見たとおりの天然なのか、それともわかっててやってるのか。絶妙のタイミングで絶妙のギャグをかましながら、伊良部センセイは今日も行く。ここらあたりのはずし方が奥田氏の筆の冴えどころ。こんなふうにワラかすタイミングを文章だけで(!)表現できるのはすごいことですよ~~。

タイトルの「町長選挙」編は、「一島全体が町長選挙に燃える島に派遣された都会人の公務員」のノイローゼを治す伊良部センセイのお話。まるで徳之島を思わせるこの島では、島全体が前町長派と現町長派に分かれて、現ナマ・脅迫・策略飛び交う熾烈な町長選挙を繰り広げています。こんな、まるで現代の日本とは思えないような民俗社会でも伊良部センセイは超マイペース。このギャップとバランス。すばらしい!

忙しすぎて落ち込むことの多いこの年末、おかげさまで声を出して笑うことができましたです。

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