椿屋敷のお客様

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2007年2月12日 (月)

無限の住人20巻

Nec_0031_29 「不老不死」というのは古今東西権力を得た連中が必ず欲しているもので、そらもう涙ぐましい努力をなさったりしとるわけです。わざわざ日本くんだりまで「不死の妙薬」探しの大船団を寄こしたりしておる秦の始皇帝とかね。

年をとるのは嫌だけど、死ぬのはとても怖いけれど、ちょっと冷静に考えれば「不老不死」はありえないし、たとえ可能でもそれで幸福ではありえないとわかりますよね。

「死のうと思っても死ぬことができない不幸」って、この世で最悪のものだと思いますよ。愛するもの全てが寿命を全うして時の彼方に消えうせていく中で自分だけが永遠の孤独地獄の中に取り残される。最悪じゃないですか!

だから「不老不死」を扱う物語は、かならずどこか滑稽で悲惨。

「無限の住人」(沙村広明著・既刊20巻)は主人公の万次が八百比丘尼の秘術かなんかで不死の肉体を得た・・・・・・・というのがベースなわけで。んで、沙村広明氏のあなどれないところはこの万次が決して一番に強くないという設定にしてあるところですかね。権力も金もまったく持ってないし。どころか読むのが憂鬱なぐらい長々と続いた「不死力解明編」では、小娘の凛ちゃんに江戸城の地下牢(またこの地下牢が暗くてじめじめ湿って気持ち悪い。沙村氏の画力が画力だけに、マンガを見てるだけで肌にカビが生えそうだった)から文字通り「手取り足取り」助け出されるありさま。いいバランス感覚だよなあ。

ただ延々と地下牢の人体実験シーンが続いたのには閉口しました。泰西帰りの蘭学者・歩蘭人のにわか狂気より、断然山田浅右衛門のキャラが面白かった。史上有名な「首切り浅」を、こんなチンチクリンなオタクオヤジにしちゃったのは凄い!世に知られた彼の居合いが、足の指までバレリーナしてる変態剣術だった!しかも「首切り浅ってこうだったかも」ってうっかり納得しちゃうぞ。このバランス感覚、すばらしい!

「不死力解明編」ではダントツ彼の存在が光ります。そのチンチクリンの彼にしてからが「万次の生き胆」→「不老不死」を言い出してます。怖いなあ。こういう変態を描かせると沙村氏の右に出るものはいないと思います。

あと、ひさびさ登場!見開き大ゴマの「無限の住人№1サディスト」屍良(この字でよかったかな?字忘れたよ)。こいつも強烈ですねえ。「春までに殺す!春までに殺す!それまで愛しあってろ!!」だってよ。こええよう。

結局、歩蘭人が「不老不死より天命を守るのが我ら医者の使命」と悟る、という落としどころだったわけですが・・・・・・・。

そういう無難なおまとめより、断然この世のものとも思われぬ変態たち(しかも連中、人体実験の影響とかじゃなく地ですよ、地)の存在感がすばらしかったのでありました。

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