外に出る犬や猫を飼ってらっしゃる方はご存知でしょうが、今から夏にかけて犬や猫の毛皮にダニがつきます。草むらに潜んでいて犬猫が通りかかるとしがみついて血を吸うのです。
毎日気をつけてあげてるのですが、外を回って藪をかぎまわることの多いモモ(紀州犬雑種・5歳・女の子)には特によくつきます。ひっついてから一日もたつと、血膨れして1cm以上のパンパンのボール状になったダニが、耳とか首筋とか犬がかきにくい場所にぶら下がっています。
慣れているとはいえ見つけるたび「ぎゃ――ッ」と思いますよ。
吸い口を皮膚の中にしっかり食い込ませているので、引っ張ってもなかなか取れません。だいたい爪で潰して殺してから取ります。黒い血がブシュッと飛び散って、なかなかに気持ち悪いです。
もうしっかり後ろ足に花粉を固めて持っています。「働き蜂」とはようゆうたもんです。人間がそばにいるのも意に介さず、実に熱心に「花から花へ♪」飛び回っています。たいしたもんだ。
こういう働き者がいるからこそ、うちの作物は人間が受粉してやらなくとも受粉して結実するわけです。まっこち、まっこちありがたいことです。咲きまくる花のめしべに、もし自分がいちいち筆持っておしべの花粉をつけて廻るはめになったら、と思うとぞっとします。こういうのは専門家に任せたほうが間違いが無い。なにせ連中はそれが人生というか生活のすべてなのだから。
NHKの「新日本紀行ふたたび」で我が鹿児島は開聞岳山麓の養蜂家の今日を放送するというので、また珍しくTVを見ました。たいへん印象的な番組でしたが、特に最近のミツバチの需要で「ハウスでマンゴーなんかの果物栽培をしている農家に、花の受粉のためにミツバチを箱ごと貸し出す・一日一箱¥10000」というのがあるのが「さもありなん」と思いました。
ハウスの中は一種の密室。虫が来ない。虫が来ないと受粉しないから、実がならない。機械化は事実上不可能。人間がいちいち受粉して廻るのはたいへんな手間とコストがかかる。
結局「被子植物が発生して以来何億年も受粉し続けているであろうミツバチ様にお願いする」のが一番手っ取り早くてコストが低くて間違いが無いわけよ。
「『養蜂』という商売は決して無くならんな」と思いましたね。
このスズメバチさんたちには何の恨みも無いのですが・・・。マジで「刺されると死ぬこともある、日本列島で一番危険な野外生物」なので、申し訳ないけれど成仏していただきました。
六角形の穴の中に白い幼虫がみっちり詰まってい るのがご覧になれるでしょうか?白い蓋は繭で中に羽化する前の幼虫が入ってます。50―60匹ぐらいの幼虫が詰まってました。もしこれが全部成虫になっていたら・・・。とぞっとします。あとは鼠算式に増えていくのです。すでに30-40匹ぐらいの成虫が出入りしていたと思います。女王蜂の姿を探しましたが見つかりませんでした。薬をかけて放置していた間にどこかに落ちてしまったのでしょうか。何はともあれごめんね。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・。
そういえばスティーブン・キング氏の大傑作「シャイニング」の中で(キューブリックの映画、あれは全然別物)、スズメバチが「邪悪と恐怖の象徴」としてすごく印象的に使われてましたね。物語にも感動しましたが「おお、アメリカにもスズメバチがおるんか。んで、アメリカ人も困っちょっとじゃね。」とちょっと笑いました。
実家の家業が植木屋なもので、家族全員「蜂の恐ろしさ」は骨身にしみてます。
スズメバチ、オオスズメバチももちろん怖いですが、一見地味なクロスズメバチも畑の地面の中に巣を作っているので、うっかり踏み抜くと何十匹もの蜂に足を攻撃されます。よく見かける蓮の実状の巣を作るアシナガバチだって実は怖い。いつも気をつけているのですが「ふっ」と気を抜いた瞬間に樹にぶら下がったスズメバチやアシナガバチの巣を手で払ってしまうし、クロスズメバチの巣を踏んたびったりするのです。この巣はバジルの畝のすぐそばでもあり、「どら、そろそろバジルを摘んむしってソースを・・・」としゃがみこんで見つけたので、今回マジにラッキーでした。
蜂の巣の近くではとにかくしゃがむことです。「ヴヴヴヴ」というあの恐ろしい羽音と「カチカチカチ」という警告音がしたら、「わたしは石だ。わたしは石だ」と唱えて動かないようにしましょう。手で払ったり叩こうとしたりしたらダメです。たとえ体に止まってもピクリとも動かずにいれば攻撃せずにいつかは飛んでいきます。冷や汗が流れるような試練ですが刺されるよりましです。いっそ「南無阿弥陀仏」と唱えたほうがいいかもしれません。黒い服もダメです。あと香水や整髪料などの人工的な香料を含む化粧品類もダメです。山や藪に入るときはほんっとスッピンのほうが安全です。「山の神様は女だから、女が入っては嫉妬を呼ぶからいけない。」という伝承がそこかしこにあるのは、ひょっとしてこのことも踏まえているのではないかと思います。
なんにせよ素人が手を出すのは危ないので、植木屋35年の父に巣の出入り口から薬をかけてもらいました。薬は家庭用の殺虫剤で充分です。とにかく一吹きでもハチに当たるとハチは失速して落ちます。巣の出入り口に集中砲撃です。見ていると体長3cmぐらいの成虫がぼとぼと落ちていきます。危険なのは偵察から戻ってきたハチが後ろから襲ってくる事で、後ろからの気配がしても不用意に動いてはいけません。手で払うなどもってのほか。冷静にやり過ごして薬を吹きかけます。充分巣の中に薬剤が行き届いたら、1日以上放置しておきます。ここで、また別な疑問が・・・。チャドクガのときも家庭用殺虫剤で充分なのですが、チャドクガもスズメバチも瞬殺してしまう家庭用のピレスロイド系殺虫剤ていったいどんなんやねん?!実はかなりあぶねー薬なのです。
「ジョロウグモの雄が雌に求愛する」の図である。大きいほうが雌で、雌の足の長さほどもない小さいほうが雄である。
こちらも見づらいが、カメムシをくわえた雌の斜め左に小さな雄がいる。雄の大きさはカメムシとさほど変わらない。これでは、うっかり交尾の後で喰われてもいたしかたないといわざるを得ない。
畑にとって「ミミズ様は神様で、蜘蛛様はお味方」なので、農薬を撒かず大事にしている。今時分畑中が雌の張った蜘蛛の巣だらけで、まさしく求愛シーズンであるために、ムカツクというかうらやましいというかにそのほとんどの巣に、雄がきている。まあしかしジョロウグモの雌は甲斐性あるからなあ。直径1mを超える実に見事な巣を張っている。自分と同じぐらいでかいバッタなんかもぐるぐる巻きにしていた。雄は、より体がでかくより立派な巣を張る雌を選ぶ傾向があるという。ある意味おなごの理想じゃのう。もう、いっそかくありたきものよ。
というわけで、わたくしも巣を整え食料を自力で手に入れるべく日夜努力しておるわけだが、「忙しい忙しい」とかいいながらこうやって他人(他蜘蛛)の恋愛沙汰をのんびり観察しているあたり、どう贔屓目に見てもジョロウグモの雌に比べると小物であるといわざるを得ない。ちと口惜しいが。
モンキアゲハが刀折れ矢尽きた風情で止まっていました。(もっともそうでなければ蝶々を写真に撮ることはできません)。
モンキアゲハの幼虫はミカン科の木の葉っぱを食べるので、彼女もうちのミカン科、レモン、かぼす、柚子、山椒etcに卵を産みつけていることでしょう。おお、来年が怖い。しかしここまで消耗しながらも目的を果たした姿、敵ながらアッパレ。弱っていてもつくづく美しい生き物であります。
山田詠美氏の小説の中で、幼い少女が同じように幼い想い人の少年に、蝶々をプレゼントされるシーンがあります。少年は少女を喜ばせようと、美しく大きな生きた蝶々の羽を毟り取り、鱗粉を撒き散らしながら細かくちぎって、紙ふぶきのように少女にかけるのです(!!!!!)。
これほど美しく残酷で強い表現があるでしょうか?少女は少年の自分への愛を知らされながらも、あまりの美しさに、残酷さに、言葉を失います。そして少年に感謝することも、責めることもできず、その場に突っ伏して嘔吐してしまうのです。―――ああ、こーんなちっこくても男は男で女は女だったんだなあ。少女が少年に求める愛と、少年が捧げる愛はすでにこんなに違う。その現実は残酷だけど、だからこそお互いがいとおしいんだなあ。――
短い簡潔な文章で、こんなにも的確に感動的に描写できる、山田詠美氏という人はすごいなあ。それ以来ずっと好きなのであります。
1990年代半ばに「ミノムシが絶滅危惧種だ」と聞き、マジかよ?と耳を疑いましたが、めっきり見かけなくなりました。原因は寄生虫です。中国がミノムシの親のオオミノガの駆除のために導入したオオミノガヤドリバエが何かの拍子に入ってきたらしいです。しかし、なんと今度はそのハエに寄生するコバチやヒメバチが出てきて、生息数が回復しつつあるのですと。ほんに自然というのは人智を超えております。
戦後の4コママンガを席巻した「サザエさん」(長谷川町子著・朝日新聞社より復刻版全45巻、しかし姉妹社版がお薦め)の中で、秋になると必ずこの虫が木からぶら下がっているものでした。サザエさんご一家は東京の世田谷区に住んでいたはずですが、あれが世田谷とはもはやSF。感慨深いものがあります。
あ、念のために申し上げておきますが、アニメの「サザエさん」とマンガの「サザエさん」は全く別物です。人畜無害なアニメ版をもってして「サザエさん」を語るなかれ。マンガの「サザエさん」はシニカルでクールでシビア、そのユーモアはブラック、朝日新聞という「良識の砦」で連載していたくせにかなりスレスレのスケベギャグもさらりとこなしてます。大人になってから意味の深さがわかる、真に大人のためのマンガです。長谷川町子氏の姉妹が出版してらした「姉妹社版」は絶版ですが、だんぜんこちらがお薦めです。ときどき古本屋で見かけますので、見つけたら即買いです。
「サザエさん」の全盛期には、まさか「姉妹社版が絶版になる」という事態を想像もしていませんでした。それこそ「ミノムシの絶滅の可能性」が想像の範囲外だったのと同じようにです。よってまことに情けないことに実家にあった「サザエさん」は散逸して残っていません。古本屋で即買いしているのはわたくし自身です。しかしこの永遠の名作を絶滅させてはならんと、読者数の回復を少しでも図るべく、布教活動にいそしんでおる次第です。
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