椿屋敷のお客様

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2006年7月29日 (土)

ごくせん・13巻

Nec_0016_18 さて、ン十年前、京都で学生をやっておりました頃は、今以上に世間知らずのお馬鹿ちゃんでありました。田舎者のこと都会者では通常考えられないような(また京都ってのが東京よりはるかに都市社会なんだわ。千年の筋金入り。)失敗をしでかしては友人達を爆笑の渦に巻き込んでおりました。

その極めつけの事件が「K桜会系の組事務所に銭湯と間違えて入ってしまった事件」でした。

(だって学生寮の近くだったんだもん。変なひょうたんマークがガラスに金箔で押してあったんだもん。その日は寮のお風呂が使えなかったんだもん。道場練習でどろどろに疲れてお風呂に早く入りたかったんだもん。暗かったんだもん)

まあ、とにかく田舎娘がスエットの上下着て、手には風呂桶とタオル、ボーッとした顔でいきなり磨りガラスの引き戸をガラリと開けたので、構成員の方たちもたまげたことでしょう。目つきの悪い三人のおじさんたちがいっせいに「ギッ」とこちらを睨みつけましたよ。

「?」何がなんだかわかりませんでしたね。さすがに「ここは銭湯ではないのかしらん?」とは思いましたが、風呂桶を持ったままボーッとしておりました。その三人のおじさんたちのうち一番年嵩が「がーはっはっはっは」と笑い出しました。

「???」

「風呂と間違ったんかい!?」

「はあ。ここは風呂じゃないのですか?」まだ鹿児島訛りが抜けてませんしね。愛嬌があったんですかね。

「ここは違うんや。そこの角を曲がって二軒目。もう間違いなや。」

「ありがとうございます。すみません。」ガララララ(ガラスを閉める音)

という事があったんですよ。暴力団新法ができてあの事務所はどうなったんでしょう。入ったところに神棚が見えて、提灯がたくさん並べてありましたよ。今にして思えばまごうかたなき組事務所。げに恐ろしきは世間知らず。

というわけで「ごくせん・13巻」(集英社・森本梢子)です。

この「ごくせん」を読むたび、今までの人生で思いもよらず一度だけのぞいた組事務所の事を思い出します。もちろんあの事務所はヤンクミの実家黒田一家のような日本でも有数のヤの字さんではなかったでしょうが。森本氏の凄さは、今まで日本のありとあらゆるメディアが日本人に吹き込んできた「極道」というものの類型を、見事に表現しているところでしょう。「リアル」でなくていいの。「類型」だから。「イメージ」だから。物語の中で力を持つのは、クソみたいな「リアリズム」ではなくて、個々人の中に累積されている「イメージを喚起」することでありましょう。

森本氏は単純なデザインとすっとぼけたセリフでそのイメージを見事に喚起してくれる名手であります。

13巻での見所は、ヤンクミ追放を企てる白川理事長が、味方にするつもりで呼び出した同窓会会長とPTA会長が、アベツル社長と犬棒組長で、なんやかんやで結局ヤンクミを守るための血判状を作るはめになってしまう下り。

――――ううううむ。見事だ!森本梢子。

何といってもアベツル社長と、犬棒組長の造形が素晴らしい!!いかにもいかにもその手の怪しい社長と組長じゃありませんか!女性誌でここまで不細工なおっさん三人を並べてページを作って良いのか?というあいかわらずの身も蓋も無さ。すげえ!

YOU本誌でも連載中ですが、ついに慎が夏祭りでヤンクミを本気モードで口説きだしております。鹿児島では15日と月末が販売日、7月末号が楽しみで楽しみで仕方ないのです。どうなるの?慎とヤンクミ!いや~ん、ドキドキ。

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