どんな世界も理不尽と不平等に満ち満ちておるわけです。特に愛だの恋だののフィールドにおいては論理も倫理も屁のツッパリにもならぬものでございます。
・・・・・・とは重々承知しておるものの「Why?どうしてこいつが?」と、そのモテモテぶりが大いなる謎、というヤツがおります。雄と雌がある世界ならば必ず。
さて最近わたくしが観察した範囲では、ちょうど1歳半になる雄鶏でしょうか。こやつがまあ、モテるモテる!特に年増のベテラン雌鳥に大モテのモテモテ。なんせ小屋の配置換えをしようと雌鳥たちを引き離したところ、夜のうちに彼女たちは脱走して朝にはこの雄鶏の元に帰っていたという。
捕まえようとすると雄鶏にすりより甘え、身を隠そうとする有様。こいつがそんなに頼りになるタマかあ?!
何の変哲もない、というかどちらかというと「デブッ、ボテッ」として動きも鈍い、若い割にはオッサンくせえ、とわたくしの目には見えるんですがねえ。雌鳥にとってはそういうのが魅力的なんすかねえ?「安定感」とか「安心感」とかいうやつ?それとも他にも鶏にしかわからない蜜のような色気が彼にはあるんすかねえ?
わからん。わたくし雌鳥ではないので。
おかげさまでオタフクの6羽の雛たちはすくすくと大きくなっておるわけです。一丁前の鶏への道を順調にたどっております。
んでもって、このオタフクと雛たちに一羽の雄鶏がいつも付き添って離れないのです。雛たちと直接の血縁がないことははっきりしています。なんせまったく違う囲いにはいっていましたので。オタフクの雛がピイピイいい出してから脱走してきて、それから夜も昼もぴったり張り付きガードマンよろしく見張るそぶり。
「おしかけオヤジ」とでも申しましょうや。まあ、現実には「なにかあったときに一緒に逃げる」ぐらいしか役に立たないけれど(笑)。それでもけなげといえばけなげ。
雛が巣立ちしてからオタフクとペアを組むのを狙ってるんだろうなあ。やっぱりもともと鶏もつがいを作る鳥なんだろうか。
もっとも最近の遺伝子解析では、どんな鳥のつがいも(たとえオシドリでも)一つの巣の卵でも他の雄の遺伝子が入っているらしいから。雄も雌も浮気し放題らしいです。
そんなもんなんだろうなあ。
今日も今日とて一丁前の鶏となるべくオタフクかあさんのスパルタ教育が24時間体制で行われております。
地面の引っかきかた、砂浴びの仕方、虫の採りかた、食べていい餌悪い餌・・・・・・・・
2年前にはオタフク、あんたもかあさん鶏の羽から顔をのぞかせてピーピー鳴いてたのにねえ。たいしたもんだ。
だいたいかあさん鶏にちゃんと抱卵してもらった鶏でないと、卵からして抱きません。すでに卵の段階から教育は始まってるの。
かあさん鶏は抱卵しながら優しく「ククク、クククク」と話しかけてます。その姿人間の胎教と同じ。これ、ほんとだよ。たぶんこのとき「かあさん鶏の声」を仕込んでるんじゃないかなあ。「孵ってからはじめて見るものを母鳥と思い込む=インプリンティング(刷り込み)」が有名だけれど、視覚だけじゃなくて聴覚教育もかなり重要らしいです。
オタフクはうちの庭で半野生の生活をしてて、その分ヘビやらタヌキやら猫やらに狙われる可能性が高いんだけれど(ここ半月ばかりのエントリー参照。モモとわたくしが血みどろでパトロール)、教育が上手で雛を失うことが少ないです。
たとえば今日の明け方もなにかが来たらしくて、オタフクが一声「ケーーーッ!」と叫んで勝手口方面に逃げてきました。身一つです。「あんた雛はどうしたのよ?」
おりしも雨。まだ体温維持機能のない雛の体力が心配でたいへん気を揉んだのですが、空がほんのり明るくなった頃合を見計らってオタフクが「クックックックック」と呼びながらそこらを走り回り始めました。するとあちこちの草陰から「ピーピーピー」と声がして、それぞれの隠れ家から雛が飛び出してきました。まだ孵化後10日しか経ってないのに、どの雛もまったく気配を殺していたので鳴き声を聞くまでわかりませんでした。つまりオタフクかあさんの「ケーーーッ!」の叫び声で危険を察してそこら中に散らばって隠れてうずくまり、雨の中、声も立てずに耐えて待ち、「クックックックック」の声で安全と判断して声を出してかあさん鶏を呼んで走り寄る。そういうルールらしいです。
まったくたいしたもんです。命がけとはいえよくここまで仕込んだもんだ。雛はそれぞれびしょびしょで震えていましたが、かあさん鶏の羽の中に飛び込んで暖めてもらうの。かあさん鶏の羽の中は暖かくて乾いていて安全(またこれがうまいこと雛を抱え込めるようにできてるんだわ。自然の設計って凄いなあ)。
こうやって手塩にかけて育てられた雛が育つと、卵を抱いてちゃんと子育てする鶏に育つんですね。孵卵器育ちの鶏にはこれができないの。かなり複雑な様式と作法とルールを母鶏から娘鶏に伝えてるみたいなので、無理からぬことであるよのう、と納得。
彼女の名はオタフク。見ての通りプウッと膨らんで見える羽毛がほっぺに生えているのでつけたのです。
同じ腹から産まれた姉妹鶏たちの中でも個性的な顔です。性格も個性的で強気。姉妹達が決して脱走しない鶏ランドから、いつも逃げ出して自分だけのテリトリーを確保。お仕着せの巣箱に決して納得せず、何が何でも自分が気に入った場所に卵を産みためて、抱卵します。
7月の上旬ぐらいからしばらく姿を消したので「ま~たどっかで卵抱いてるな」とわかったのですが、それがどこかはわからない。当然の事。抱卵中の雌鳥は雨が降ろうと槍が降ろうと外敵が来ようと、決して卵の上から動くことはできないのだから、ちょっとやそっとでは見つからない、なおかつ自分が落ち着ける場所を選ぶことが肝心。
1週間ぐらい前、納屋の前にあまりにもブタクサがぼうぼう生えてきたので草刈機をかけました。
かけ終わって刈られたブタクサが日で干からびてびっくり。
なんとブタクサの根元にオタフクが鬼のような顔でご鎮座ましましてるではありませんか!!彼女はブタクサの藪の下で抱卵していたのです!そして高速で回転してものすごい音を立てる草刈機の刃が、ほんの目の前スレスレを行き来してもビクともせず、大事な卵を抱き続けたのです。
なんて、たいしたヤツでしょう!見上げた根性!!強気なやつとは思ってましたがここまでとは思わなんだ。
「ごめんごめん、そうだったか。」慌てて丁重にお詫び申し上げ、刈ったブタクサの代わりに古い木箱を雨よけに被せました。お気に召すかどうか心配でしたが、ちゃんと抱卵を続けてくれたので大丈夫だったようです。ホッ。
そして昨日の朝から「ピヨピヨ」とヒヨコちゃんたちがオタフクの腹の下から顔を出してきてます。オタフク、さらにますます強気。言葉は通じずとも「この子たちに手を出さば殺す!」と殺気が伝わってきます。そしてヒヨコちゃんたちには始終「ククククククッ」と優しげに声かけ。
まったくもって、たいしたヤツだよ。
鹿児島は指宿の砂風呂は有名です。あれに入ると全身がかっと熱くなって、足の先の先まで血流がどくどくと流れるのがわかります。血行が良くなることはなはだし。気持ちがとてもいいですが、10分入ればもうぐったり。
あの砂風呂を日常的に生活に取り入れている動物が鶏なんであります。
まあ連中の場合、日光で温められた土を全身にかけて羽の隅々までいきわたらせ、皮膚を摩擦するという安上がりでお手軽な砂風呂ではありますが。とてもとても気持ちがいいらしいです。
今日のように久々に、いいお天気で気温が上昇した日は絶好の砂風呂日和。あっちでもこっちでも鶏たちが地面を掘り返して、恍惚とした表情で砂を浴びてます。見るからに幸せそう。
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