椿屋敷のお客様

マンガ Feed

2007年12月 3日 (月)

MASTERキートンがシロアリに喰われた!!

1203_2  12032_2 ぐわああああん!!あまりのショックに目がくらみます。

ダンボールに入れて日置氏の実家の縁側に置いていた「MASTERキートン」(全18巻・浦沢直樹著・小学館)がシロアリに喰われてしまいました。

「MASTERキートン」は所蔵するマンガの中で1,2を争う好きな作品なのに。ばかばかばか!あたしのばか!

キートンさんはすごすぎ!動物学者の平賀太平さんと、イギリス貴族のパトリシアさんとの間に産まれたハーフで、オクスフォードで考古学の学位をとって、その間に学生結婚して娘が一人。なのに離婚をきっかけに軍隊に入隊。世界に冠たるSASに所属して数々の軍功を上げて「サバイバル術のマスター」と呼ばれちゃう。んでも、キートンさん本人は考古学にも奥さんにも未練たらたらで、ほんと普通のオジサンなの。このギャップが!たまらんいいの。

何でも知ってて何でもできて、体力も格闘術もすごくて、なのに普通のオジサン。いいでしょ~~~~?!

基本は1話完結なんだけど、でてくるキャラの造詣が深くて、顔を見るだけで「ああ、こんな人生歩んできたんだろうな」と想像がついちゃうような巧みな描写力。いいよお。

浦沢氏、いろんなヒット作があるけれど、一番読み応えがあって飽きない秀作はこの「MASTERキートン」です。

ああ、もう。何でこんなお気に入りをダメにしちゃうんだよ。すぐ買いに走らなくちゃ。

2007年12月 2日 (日)

帯をギュッとね!

1202 学生時代、体育会の合気道部でした(何を考えていたのやら)。柔道部と時間差で道場を使っていましたので、世にも臭い煮〆たような色の道着の耳が潰れた坊主頭の男達と道場練習のたびにすれ違ってました。柔道ってのは暗い重いダサいの極地のイメージがありましたね。このマンガが出るまでは。

「帯をギュッとね!」(全30巻・河合克敏著・小学館)です。1巻初版は1989年。

「ニュー・ウェイブ・ジュードー・コミック」の名に恥じない明るさと軽さ。でも技とか人間関係とか基本のところはとてもしっかりしていました。浜松の高校で粉河、杉、斉藤、宮崎、三溝の新入生が新しく柔道部を作って強くしていくというお約束の展開。でも、上級生がいないせいかどうか、この連中にまったくの悲壮感がなくて、とてもよかった。しかも女子マネージャーとして最初から保奈美と桜子がいて花も色気もありました。運動神経抜群の桜子なんかのちに新入生麻里ちゃんの練習相手として無理やり部員にさせられちゃってるし。

昔ながらの運動部独特の悲壮感、あれ、ホントうんざり。現実に体育会にいたのでいやというほど味わいました。何の意味もないプレッシャーだと思うけれど、日本社会のあちこちにはびこっていると思います。意味のないいじめ。派閥抗争。そんなものからまったく自由な浜名湖高校柔道部。いいよお~~~!

これで弱けりゃまた話が違うんだけれど、こいつら強いよ。全国制覇するんだもん。思えばスポーツマンガが「ど根性」一辺倒から「合理的トレーニング」に変わりだしたのがこの頃のような気がする。たぶん現実のスポーツ界も大変革があったんじゃないかな。

テクニシャン斉藤が好き。技のデパート斉藤が繰り出す柔道技の数々、思わず男友達使って実験してみたりしたなあ。あと、曉泉学園のオカマ言葉の永田とか大好き。桜子もよかった。県警の機動隊から浜高柔道部のコーチになった西久保さんもなかなか渋い。

コミックスの巻末は毎回読者からの似顔絵コンテストで、これがまたおもしろかった。本編はサンデーで読んでるので、コミックス買ったらここから読んだりしてたな。

作者の河合氏、今ヤングサンデーで「とめはね」という書道(!!)マンガを書いてます。「マイナー分野のマンガを書かせたら日本一」とどこかで読んだな。ほんとそうかも。これもおもしろい。書道なのに。

2007年12月 1日 (土)

BANANA FISH

1201 永遠の名作「BANANA FISH」(全19巻・吉田秋生著・小学館)であります。

これについては、いくら語っても語っても言葉が足りなくなるんですよね。青春の書。初版は1987年。ちょうど20年前。

アッシュの抱える切なさ・・・・・・。今読んでもたまりません。能力があればあるだけ、愛情があればあるだけ、愛するものたちのために一人で戦わなければならなくなる。「それでも幸せ」と言い切るアッシュがけなげで、けなげで・・・・・・・。

当時、「何の能もない英二なんかが、なんでアッシュのそばにいるの!?」と本気で憎みました。ああ、これってまるで月龍のよう。あんたの気持ちはよくわかるよ。

でも、年を経てもう一度読むと、アッシュがなぜ英二をそばに置き続けたがわかります。「才能があるから」「能力があるから」の条件付でなく、そばにいてくれる人ってホント大切。あまりにも使い古されたセリフだけれど「人は一人では生きられない」の。誰であっても。

名キャラ、名シーンの連続で、ここでは語りつくせないけれど、ショーターが大好きでした。まさか死ぬとは思わなくて、少女コミックを立ち読みしていたとき(ああ、昔からあたしのとる行動はかわっとらん・・・・)、あまりの衝撃のシーンに思わず本屋で黙祷してしまいました。

ショーターの跡継ぎボスとして、シン・スウ・リンがちびのガキンチョででています。まさかあんなに大きくなって、しかも長生きして偉くなるとは夢にも思わなんだ。

永遠の書「BANANA FISH」。今読んでもまったく古くない。どうぞみなさまご一読を。

2007年11月30日 (金)

TO-Y

1130 だから、ジャンプでもマガジンでもなく「男組」の昔からサンデー派なんでございます。

3大少年誌の中では売り上げいつも今ひとつだけれど、いいのサンデーだから。これからもただただ喧しいジャンプとか、ヤンキーさえ出せばいいのかマガジンとかとは一線を画した路線を歩んでいってください。

というわけで1985年(うおッ)サンデー連載の「TO-Y」(全10巻・上條淳士著・小学館)です。

このマンガはもう「1にも2にも加藤か志子女史」です。トーイにもニヤにも興味が持てなかった加藤女史と哀川陽司、そしてヒデロー。ここらが読みどころでしょう。

当時の時代背景として、「歌のベストテン」とか「レコード大賞」とかが「日本の芸能界の権威」ということになっていて、トーイもやたらとこれらに反発しています。今となっては全部地に落ちてしまったので(ベストテン番組などなくなってもう久しい)、この話はもう成り立たないなあ。読み返して何かとてもなつかしくなってしまいましたですよ。

いうまでもなく上條氏は山ほどの「真似しごろ(フォロワー)」を産んだスタイリッシュな絵の人。基本は大友克洋系なのですが、大友氏に加藤女史やヒデローは描けない。加藤女史のそこらの小娘ではまったく太刀打ちできない圧倒的な色気。ゆるくまとめた髪。マスカラとアイラインばしばしの底力のある目。たっぷりの口紅と唇の脇のほくろ。力強いあごのライン。そしてスーツ、スーツ、スーツ・・・・・。当時少年誌にも青年誌にも、女性誌にすらこんな色っぽい大人の女を描いたマンガはありませんでした。「キャリアというのはこんなにも色っぽいものか」と目を洗われるようでしたよ。

あとで、上條氏には作画上の協力者の女性がいて、その人が女性キャラを描いているのだと聞きましたが、それでもこの色気を同一画面上に違和感なく成立させる上條氏のセンスには脱帽しました。

とにかく一度見ていただくしかない!今見てもすさまじいこの色気。少年誌でありながらこういうものをときおりひょいと載せてしまうサンデー。だからサンデー立ち読みは止められないのですよ。

あと、ヒデローが作る料理がむちゃくちゃおいしそうだったな。

2007年11月29日 (木)

機動警察パトレイバー

1129 「機動警察パトレイバー」(全22巻・ゆうきまさみ著・小学館)です。

うわあ、1巻初版は1988年だよ。もう20年近くも前になるのか・・・・・・。当時とにかく人気がありました。少年サンデー派のわたくしとしてはうれしかったな。巨匠押井守氏の監督でアニメ化もされましたね。

とにかく脇役がよかった!!正直言って主人公の野明も遊馬もあまり好きではありませんでした。なんといっても内海でしょう。そして特車2課の昼行灯後藤隊長。この二人は頭の切れ具合といい、内海が単純な悪役ではなく、後藤が単純な正義の味方ではない、という点で対をなしています。それぞれに善でもあり悪でもある要素を持っていて、それが警察とシャフトという二つの組織を二重構造にし、物語に深みと広がりを与えていました。

そして特車2課の面々。進士、大田、山崎。整備班長榊さん。整備班がわらわらと大人数なのがリアルで納得したなあ。こういうロボットものでいつも「乗って戦う連中だけで、整備するやつはおらんのかよ。ねじ一本でもこの手のメカは調整がたいへんだろうが」と不満に思っていたので、「そうだよそうだよこれぐらいの人数はいるぞ」と。整備班それでもいつも徹夜仕事でしたね。

総じてエンジニアびいきのマンガでした。元来エンジニアびいきのわたくしの心の琴線に触れましたよ。みんな誇りを持って自分とこのメカを作ってたな。篠原重工は篠原なりに、シャフトはシャフトなりのメカデザインの特色が描き分けられていて(本社ビルまでそれぞれの特色が出ていて笑ってしまった)、そういう芸の細かさがたまらんよかった。

冷徹だけど内海には頭が上がらない切れ長の目の黒崎くん。地味な顔で有能な松井刑事。それぞれの顔がいかにもそれぞれの性格を反映してて、うううん、こういう秀逸なデザインに弱いんだよねあたし。

デザインといってもみんな着ている服はダサかったけど(笑)。

今読むと「携帯がここまで発達するって、ほんのこの間まで想像もつかなかったよな」とか、「結局レイバー型の機械の発達はなかったな」」とか、このマンガで予想された未来とは違ってしまったけれど、それでもキャラの力(特に脇役)で読ませてくれます。やっぱりとてもおもしろい。

2007年11月27日 (火)

ヨリが跳ぶ

1127 「ヨリが跳ぶ」(全20巻・ヒラマツミノル著・講談社)です。

今の女子バレーブームが来る以前に週刊モーニングに連載されていて、1巻1995年初版です。

これがねえ・・・・・、すごくおもしろいんだけれど、そのおもしろさをどう説明したらいいか考え込んでしまう作品なのであります。

なにせタイトルにもなっている主人公のヨリが変。桁外れに変。身長180cmを超える図体で、大飯ぐらいで、ときどきすごいアタックを打つんだけどとんでもないノーコン。社会常識ゼロのクセに自信家で、どこにでもちょろちょろ顔を出す。最初まだ女子高生だけど「こんな女子高生がどこにいるよ!」です。

んでも、彼女が勝手にライバル視している「女子バレー界の女王・ヒロコ」もまたヘンチクリンさでは負けておらず、ヒロコとヨリの会話など腰が抜けるほど変なのであります。ヒロコの所属する王者国舞リップスに舐められて飛び出し、実業団のオグリ製菓に入ることになったヨリなんだけれど、このオグリチームが監督以下ちょっと変な人ばかり。監督はヨリの恩師にベタ惚れの後輩だし、無愛想極まりないけれどバレーの実力はすごいヤンキー・リカコ、人はいいけれど気の回しすぎでいつもぐるぐる空回りしているキャプテン阿久津、色気も能力もあるけれどこれまたど外れた自信家の観音寺。・・・・・・・・

んで、でてくるライバルチームが次から次へと変なやつらばかり。でも変なんだけれど決して不愉快じゃないの。だから読後感がすごくいい。作者のヒラマツ氏が人間に対して愛情がある人なんだろうな、と思わせる爽快感があるのです。

ただねえ、これ、文章じゃなかなかおもしろさを伝えるのが難しい。絵もうまいんだけれど独特のタッチで、この絵も「緊迫したシーンのはずなのにどこかのんびり」した雰囲気に貢献しているのです。

とにかく読んでみて。という作品のひとつです。

2007年11月26日 (月)

花咲ける青少年

1126 男臭いマンガばかりが続いたので、ここらで少女マンガを。

「花咲ける青少年」(全12巻・樹なつみ著・白泉社)です。

しかしながら果たして樹マンガを「少女マンガ」のカテゴリーに収めることができるのか?難題であります。確かに少女マンガ的なお膳立てはすべて揃ってます。基本は学園から(もっともすぐ学園から離れちゃうけど)。謎めいた銀色の瞳の美少女転校生。次から次へと現れる王子さま。美少女はどこやらの国のやんごとなきお血筋らしい。そう、確かにすべて少女マンガのアイテムですよ。作者の「これだけ少女マンガの筋を押さえておるんじゃ。何の文句があるんじゃ?」という声が聞こえてきそうです。

しかいながら派手!あまりにもど派手過ぎ!!こういうところが樹氏、関西人だなあ、と思います。あ、これ褒めてるんです。だからこそとてつもなくおもしろい。

何せ主人公の花鹿、世界的大財閥の一人娘で、しかもラギネイという金持ち国の知らざれる王位継承者で、物心ついたときから離れ小島で白豹と暮らしてて、お目付け役が華僑財閥の御曹司、立人(これがまたいい男!)これでもまだ足りなくて、かぐや姫のごとくヨーロッパ貴族の超絶ハンサムくんだの、ラギネイの現王子さまだの、アメリカ財閥の跡取り息子だのが次から次へと求婚者としてやってくるのですぞ!!

Oh!!あまりのゴージャスさにくらくらします。そのくせ何かといえばアクションシーンと銃撃戦。盛り上がりは必ずこれ。おいおい(笑)少女マンガじゃなかったのですか。

ラストも確かに少女マンガらしいラストのアイテムです。正しい少女マンガのラストには間違いない。でも、そこに至るまでの全世界を巻き込んでのこの大騒ぎは・・・・・・・すばらしい!!

樹マンガは大好きですが、特にこの作品は誰にもまねできない派手さという点で一番好きです。

2007年11月25日 (日)

AKIRA

1125 うおっと!これがでてきました。「AKIRA」(全6巻・大友克洋著・講談社)でございます。

なんと初版1984年。うっそおーーー!!そんな昔になるのか!光陰矢のごとし。でも、今読んでもまったく時代とか古さを感じさせない。もう、なにもかも超越しちゃってます。

「マンガ界の流れを変えた」といわれる大傑作。誰かが「こういうシーンはこう描けばいいのか!とこれを見ればわかる」と言ってましたが、本当にそのとおり。マンガにおけるありとあらゆる新しい表現に満ち満ちていて、脳天を殴られるようなショックを受けました。もう20年以上前になるわけですが、今のマンガ(特に男性誌)は大なり小なり確実にこの絵の影響を受けています

これがでたあとは雨後の筍のように「ハルマゲドンもの」が流行りました。細い丸ペンで集中線だらけの絵で。恥ずかしながらわたくしも真似てみたりしましたが、本家本元みたいな使い方はできないの。今見ても斬新。

「AKIRA」の前に「気分はもう戦争」や「童夢」なんかもあったんだけれどちょっと色気が足りなかったかな?という絵が、「AKIRA」で水気がでてきてそれが人気に拍車をかけたのではないでしょうか?

話もよかったよなあ。特にそれまでの大友作品だと主人公に感情移入しづらかったんだけれど、金田がすごくよかった。初めて大友作品の主人公をカッコいいと思いました(そういや金田って最後まで「金田」で、下の名前が出てこなかったんだよな。それも一種独特の乾いたタッチの大友マンガにはふさわしいかも)。と、こう言うと必ず「違う。主人公は鉄雄だ!」と異を唱える向きがあるんだよね。ええええ~~~?そうかあ?

「健康優良不良少年」金田がいてはじめて回る話だと思うけどなあ。あくまで己の肉体と知恵と培った人間関係で状況を打開していく。いいよ~金田。鉄雄には自分本人の意思なんかまるでなくてさ。「凡人が本人の意思とは無関係に強大な力を背負わされた悲劇」でかわいそうだなあ、とは思ったけどさ。

あと、大佐が好きだな。大佐とおばさん、まだまだいけるんだからくっついちゃえよ、と今でも思います。バイク改造の達人クラウンのボスも好き。ああ、やっぱりあたし技術屋に弱い。

2007年11月24日 (土)

ピンポン

1124 「ピンポン」(全5巻・松本大洋著・小学館)です。

正直、これを読むまで松本大洋氏は「ものすごく絵がうまくて才能があるんだろうけれどついていけない」漫画家さんでした。心のありようが天才の場所にあって、凡人にはついていけん、と。

「ピンポン」を読んで初めて、「ああ松本大洋のような天才にも、『天才』と仰ぐ相手があり、その相手に惚れたり失望したり人間らしいことをしてるんだな」と思ったのです。月並みな言葉ですがやっと感情移入できた、っちゅうこってすね。

それほど「卓球の天才(今はサボってくすぶってるけれど)ペコ」を巡る人間関係にはリアリティがありました。いうまでもないけれど特にスマイル。ペコがチャイナにもアクマにすらも負けて、ドラゴンには相手にもされず挫折して卓球から離れても「必ず帰ってくる」と信じ続けて、好きでもない卓球を続けるスマイル。ペコが速攻型でスマイルがカット型であるのはなんと象徴的なことでしょう!松本氏のすごいところは彼らすべての才能のみならず性格、心理、生き様すべてを、卓球シーンの絵のみで表現しているところです。凄い迫力。独特のクセのある絵なのだけれど誰にも真似できない。これこそ天才、と思いましたですよ。

何年か前、宮藤官九郎脚本で映画化されたので行きました。マンションから落ちる前の窪塚洋介がペコ役で、ARATAがスマイル役、そしてドラゴン役が中村師童。彼の出世作となりましたですが、その後のどんなドラマよりドラゴン役がぴったりだったんじゃないの?というぐらいはまってました。

2007年11月23日 (金)

ヒカルの碁

1123 「ヒカルの碁」(全23巻・原作ほったゆみ/マンガ尾畑健/監修梅沢由香里二段・集英社)でございます。

今となっては昔日の夢となりましたが、少年ジャンプが日本を席巻した時期がありました。四大新聞よりも発行部数があり、電車に乗るとサラリーマンも学生も「男という男がみんなジャンプを読んでいる」というありさま。はっきりいって何かの宗教みたいで薄気味が悪かった。いわば「友情・努力・勝利」というお題目を唱える新興宗教みたいなものだと思ってました。

そのジャンプの栄耀栄華に翳りが出てきたころに、「ヒカルの碁」が始まりました(初版は1999年)。このとき初めて「ジャンプというのはなんと懐の広いマンガ雑誌だ」と見直しましたね。なんせ囲碁ですよ!将棋マンガは数々あれど、囲碁マンガってのはほんとに見たことがありませんでした。それを少年誌でやる!しかもあの少年ジャンプ!

案の定連載時は浮きまくってましたけど。それこそがこのマンガが傑作であることの証。今も昔もジャンプが切り捨ててきた「少年の成長」とか「それを促す人間関係」とかを実に丁寧に描いてくれてます。

「ちょっと待て。ジャンプの標語は『友情』だ。人間関係は描いてるだろ!」

違うでしょ。ジャンプが描いているのは「ライバル関係」だけ。しかもどんどん強力になるライバルを登場させるだけ。同世代で同じジャンルに携わるしかも同性(ま、男同士って事ね)との関係を描くことには実に熱心だけど、世の中ってのはガキンチョの男だけでできてるもんじゃないでしょ?じじいもいればおばさんもいる、あかんぼもいればおっさんもいるの。生きてればそういう人たちと必ず何らかの関わりを持たなきゃならなくなってくるんだって。

「ヒカルの碁」じゃ、主人公の進藤ヒカルの家族とか、ライバル搭矢アキラの家族とか実に丁寧に描かれてました。あと囲碁に関係のない学友とか、もちろん囲碁界に関わる大人も子供もプロもアマも、主人公が関わりそうな人間関係をなんと細やかに描いていることでしょう。ヒカルが対局しているシーンはもちろん迫力なんだけれど、なんてことない日常のシーンでも絶対に飽きない。すごいことですよ!これは。

ほったゆみ氏のネームによって小畑健氏の華麗にして繊細な絵がとても生かされてました。このタッグを組ませた編集のセンスはすばらしい。落日のジャンプが生み出した傑作であると思います。

あ、登場人物の中で好きなのは、「中学生のクセに袴と扇子、将棋も碁もやる勝負師加賀」とか、「いつでも白いスーツです。こだわる男の緒方七段」とか、「軽いのりだけれど押さえるところは押さえてるよ、囲碁からパソコンから何でもござれ中国囲碁界の兄貴・楊梅」とかです。

もちろん「囲碁界のプリンス搭矢アキラ」も、ジャンプのライバル達の中では飛びぬけて毛並みがよさそうで大好き。

このマンガを読んで「碁を習いてええ!」と思いましたが、いまだ果たせず。いつかやりたい「右上スミ小目」。