椿屋敷のお客様

マンガ Feed

2007年11月21日 (水)

沈黙の艦隊

1121The Silent Service”「沈黙の艦隊」(全32巻・かわぐちかいじ著・講談社)でございます。

1巻初版は1989年ですがな!もうそんなになるのか!

今だから恥をしのんで申し上げますが、当時わたくしの周りでは「パッシブ・ソナー」とか「ピンガーを打て!」とか「圧壊深度」とかこのマンガで使われているサブマリン用語を使うのが流行りました。若気の至りというものです。それほど新鮮でかっこよく感じた「深海で繰り広げられる潜水艦同士の激闘の世界」でした。出てくる登場人物は徹底して男(しかもプロ)ばっかだし。

海江田の戦略が痺れるほどカッコよかった。世界中の海でアメリカや旧ソ連の精鋭を敵に回して戦うんだけれど、「ええええ?そんな手があったのか!!」という計算されつくして奇手奇策にすら見える作戦の連続。こんな作戦考え付く作者のかわぐちかいじ氏ほんとただモンじゃねえと思ったもん。

デビュー海戦が高知県沖で、次が南太平洋、米第7艦隊を敵に回しての大立ち回りなんだけど、なんとね、潜水艦の中でモーツァルトの『ジュピター』をガンガン鳴らしながら戦うんだよ!何考えてんだよ?

それは実は海江田が巧妙に計算しつくした罠で、物量に勝る第7艦隊はころっと引っかかってその後の「やまと」の航海を許してしまうんだけれどね。それから先も「こんだあ、いくら『やまと』でも突破は無理じゃろ」という危機死闘の連続。特にベイツ兄弟との北極海海戦と米大西洋艦隊とのNY沖海戦はすごかったのう!

登場人物があまりにも多すぎ、多岐にわたりすぎて誰が好きとかもういえないぐらいなんだけれど。まあ、チェックポイントは海江田の同期にして「たつなみ」艦長深町の海江田への執着ぶりとか、それに答える海江田も「深町ならかわす」とかいう信頼ぶりとか、深町の副長速水が妙にカマっぽいとか、やっぱあたし職人好きだわ南波水測長とか、こういう地味タイプも好みなのよ「手旗信号で艦隊間連絡」沼田司令とか、海上自衛隊のメンバーがおもしろいかな。

あと当時の政治状況を反映した粘っこい顔の政治家達が中盤以降続々登場するんだけど、右も左も中道もなかなかのおもしろさでした。「こんな優秀な連中がほんまに政治家におるんかよ。」とは、当時も思いましたし今も思いますけれどね。

ただねえ・・・・ラストはねえ・・・・・。

これしかやはり決着のつけようがなかったかな。まあ、他に考えようはないか。いまだに納得がいくような、そうでないような・・・・・。傑作ってのはそういうものかも知れませんのですがね。

そう、かわぐちかいじ氏畢生の傑作だと思います。今後もしかしてこれを超えるものを描くかもしれないけれど、少なくとも今連載中の「ジパング」よりはこっちのほうが好きだな。「あのときこうしていれば」の「たられば歴史モノ(特に第二次世界大戦モノ)」はどうしても後出しジャンケンみたいで。必死で未来を語ろうとしている「沈黙の艦隊」のほうが、いい。あれから世界情勢はすっかり様変わりしてしまったけれど、今でもその評価は変わりません。

2007年11月20日 (火)

砂の薔薇

1120_2 「砂の薔薇」(全15巻・新谷かおる著・白泉社)だあー―!

数多くの傑作を生み出した巨匠新谷かおるですが、この「砂の薔薇」が一番好きです。

「女だけの対テロ部隊CATディビジョンM」。もうこれだけでぐっとくる設定でしょ?隊長は美貌の日本人女性マリー・ローズバンク。彼女は夫と子供をテロによって殺され、自身も瀕死の重傷を負い胸に薔薇に見える手術痕が残ってしまったのです。テロリストへの復讐を誓って、強烈な個性を持つ部下達と世界中のテロ活動を阻止せんと大活躍しております。

部下達も女だけ。仕事のときは男顔負けのクールさとタフさを見せる彼女達だけど、女だもん、女ならではの悩みと苦しみをそれぞれ抱えもってるの。クールに見えて東ドイツから亡命してきた傷を持つ副官のヘルガ。戦闘機からヘリから乗り物なら何でもござれの男好きのアイリーン。孤独な元モデルの狙撃手デライラ。ソビエトから亡命してきた爆発物の専門家ジェシカ。明るいムードメーカーで料理好きで毒物の専門家のリン。元天才でドクターの称号を持つコリーン。多士済々であります。んで、新谷氏の奥さんは同じく漫画家の佐伯かよの氏なんだけど、この奥さんといい奥さんの交友関係といいかなりのモンなんだろうな(あの一条ゆかり氏も交友があるらしいから)、と思わせるぐらい女達の描きかたがリアル。なんかすごいよ~~~!

お話も一話一話もよく練られていて、「ううううむ!」とうならされる構成力と薀蓄のすばらしさ。

特に好きなのは「赤い星のガリル」。世界五箇所同時爆破予告がなされ、仕掛けられた爆弾は解体不能。パリやリオデジャネイロの爆発物処理班は解体に失敗して爆死。NYのエンパイヤーステートビルを担当するCATメンバーにも危機が・・・・・という、全編はらはらドキドキ。

その男達の専門職がお手上げだった爆弾を、マリーとその部下達は「いかにも女」な手段で解体していくの。小麦粉。サラダオイル。ボウルと泡だて器。秤。ティッシュペーパー。バケツ。マニキュアにドライヤー。ハンドクリーム。爆弾の解体作業なのにわくわくするよ。こんな台所用品と美容室用品で無敵の爆弾をどうやって解体したのかは読んでみて。

読んでみて絶対損はしない。これもそんな作品のひとつです。

ギャラリーフェイク

1120 というわけで、整理してたら出てきたぞ。「ギャラリーフェイク」全32巻(細野不二彦著・小学館)です。

1巻の奥付を見てみたら、なんと初版1992年。まだバブル崩壊の直後でジャパンマネーがも少しあった頃です。主人公の藤田もいきなりアタッシュケース満杯の札束もって登場してるし。1巻の藤田は悪そうだなあ~~~。

少年誌や青年誌には、いわば「ジャンルを問わないブラック・ジャック的主人公の系列」ってのがあって、

①主人公が金に汚い悪党(と見せかけた実は人情派)

②あるジャンルで世界的に通用する技術を持っている

③その技術を見込まれて世界中を飛び回っている

④基本は一話完結

という条件をみたすピカレスクロマンと見せかけた人情話が周期的に人気を博するのであります。たとえば「ザ・シェフ」とかこの「ギャラリーフェイク」とかです。

主人公が「その道の超プロフェッショナル」という設定なので、そのジャンルのオタク的知識が満載され、読者の知識欲も満足。「ギャラリーフェイク」も「美術界のあんな話、こんな話」が満載で、連載当初から「ほええええ!」と感心しましたが、バブル直後のど派手な話ばかりでなく、2005年まで続いた連載の中では「バブルの後始末の話」とか地道な話もたくさんあって好感が持てました。

主人公の藤田もなんだかんだいってホント人のいいおっさんで、連載当初は「あんたもう結構いい年なんだから、そんな突っ張らんでも」と思っていた性格もかなり丸くなり、ワインが熟成されるがごとく(といってもあたし酒飲めないんだけど)まろやかになってましたなあ。アラブの王族にしてギャラリーの助手、サラちゃんとは結局最後までキスだけだったけど。いつまでもほっとかないでちゃんと抱いてやれよ。

この手の話では、とにかく脇役が魅力的でないとどうしようもないんですが、その点も名手細野不二彦の抜かりはなく、一癖も二癖もある悪党や善人がてんこ盛り。特にお気に入りの脇役は「免許証からパスポート、パチンコの認証まで偽造なら何でもお任せのニンベン師」と、「出っ歯でちびすけ、国家公務員の名を持つ国宝オタク国宝Gメンの知念」「藤田以上にオタクはいってます。変態です。『世界の鼻』調香師のジャン・ポール・香本」です。

読んでて飽きない傑作だと思います。

2007年11月19日 (月)

ダンボール60箱分のマンガ

Nec_0034 ああ、ブログで公開するにはあまりにもお恥ずかしいこの惨状。

日置市の父方の実家に両親が引っ越すので、そこの倉庫にしまってあったマンガをこちらに持ってこなければなりません。

その量ダンボール60箱分!

今日はまだ20箱しかこちらにきていません。はああああ。

この膨大な量のマンガ本を収納するための作りつけの大型本棚も作らねばならず、やるこた山積み!!

でも、その本棚ができたら、これほど気持ちいいことはないので、がんばって作ります。

んで、これからそのマンガの整理がてら、しばらくマンガの紹介レビューが多くなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2007年11月 8日 (木)

ヨルムンガンド・3巻

1108 「僕は世界から嫌われてるのか?」

「でも、どうしてなのかよくわからないけど、それでも僕は世界が好きなんだ。」

ちょうど自分自身もそんな気分だったので、「ヨルムンガンド・3巻」(高橋慶太郎著・小学館)のヨナ君のセリフにドキッとしました。

「世界中から拒否されてる」「あたしは必要のない人間」「いないほうがいい人間」

青臭いけれど心がそういう追い詰められ方をするときがあるでしょう?それでもふっと見ると世界は美しかったり愛しく見えたりするわけですよ。そうするとまた「何とかやっていくか・・・・・」と気力が出てきたりするんです。

「武器商人」などという物騒なものをテーマにしながら(テーマにしているからこそ?)、こういう意味深なセリフをさりげなくさしはさむ、ヨルムンガンドはほんと侮りがたし。

以下ネタばれ注意。

この巻から主人公のココとヨナの部隊はアフリカに上陸するんだけれど、そこで強力なライバルの中国人武器商人がでてきます。その描写も強烈。いやその武器商人の美人女秘書ってのがでてくるんだけれど、これがCTAのダニ、スケアクロウの大男のボディーガードを、あっという間に倒します。一見おとなしめの黒髪おかっぱで女学生みたいなスーツを着た秘書が、いきなりおしっこするみたいにスカートを捲り上げて大男に強烈無比の回し蹴りをかます様は必見のシーン。こんな強烈なシーン、マンガでは久しぶりに見ました。

あと、ココにレズ惚れしている片目のバルメが、この謎の女秘書の師匠と因縁があるらしく、珍しく戦場でぶちきれているバルメのシーンでこの巻が終わっています。

なんというか、いろいろ荒いところもある作品だと思うのですが、「どうなるの?」「どうなるの?」と思わせるパワーがすごい。「こういうのを読める世の中ってのはいいなあ。」と思うのです。おもしろいマンガを読んでは「何とか次が読めるようにがんばってみよう」と、思うことができるのです。

2007年10月20日 (土)

カルバニア物語・11巻

1020 「月日のたつのは早いもの・・・・・」平々凡々な言葉ですが、年を重ねるごとにその言葉が重みを増します。本当に早いものです。

「カルバニア物語」(TONO著・徳間書店)は年1冊ペースで新刊が出ていますので、もう10年。TONO氏ではありませんがまさかこんなに続くとは。

いえ決しておもしろくないというわけではなく、あまりにもおもしろいので、「このペースのまま少女マンガというジャンルで描き続けていくことができるのかしらん?」と思っていたのです。杞憂でした。

11巻もあいかわらずおもしろいです。いよいよ主人公エキューが「カルバニア初の女公爵」に叙爵されるわけですが、この間の主役は彼女ではない。あとがきにも書いてありましたが「後家、後妻、妊婦」である熟女たちです。

ホルグの後家二コール、バスクの後妻アンヌ、タンタロット元公爵の子を身籠ったナタリー。どの熟女の個性も強烈。特にホルグの後家二コールはエキューをして「才色兼備」と言わしめるやり手ながら男嫌い。癖強し。

うううううむ、それにしても10年前ならこの年齢の女たちを主にもってくるのは許されなかったでしょう。思うにマンガを読む年齢が全般的に上がっているのでしょうね。「カルバニア物語」が連載されている「CHARA」は、10年前ばりばりやおいの少女誌だったように記憶しますが。読者の年齢層が上がって懐も深くなり「少年同士の美しい恋愛」じゃなくても平然と受け入れることができるようになってきたのでしょうね。

「年をとる」ということはそういうことですね。「何でもあり」だと受け入れることができるようになる。「明日は誰にもわからない」と。それはとてもすばらしいことだと思うのです。

2007年10月17日 (水)

鋼の錬金術師・17巻

1017  アニメブームが一段落しても、マンガの「鋼の錬金術師」は続いているわけです。圧倒的にマンガのほうがおもしろいし、深いので、それで大満足。

「鋼の錬金術師・17巻」(荒川弘著・スクエアエニックス)前巻から登場した「ブリッグズの北壁」オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将、大活躍。というよりエルリック兄弟、影薄いです。表紙からしてこの有様。部下をバックにサーベル片手に高々と足組んでメンチ切って座るオリヴィエ様。ほんとにこのマンガにでてくる女たちって癖強いよなあ~~~。

いや、オリヴィエ様の場合、「クセ」で済まない個性の強さ。荒川氏「キャラの誕生日とか血液型とか決めない」とおっしゃってますが、間違いなくこのお方は獅子座。すげえ。

物語のほうも、今まで広げてきた大風呂敷を徐々に畳む方向に来ているらしく、「アメストリス建国の謎」だの「エルリック親父の謎」だの解明しようとする姿勢が見えます。

とかくファンタジー系のマンガでは、広げに広げた大風呂敷をまったく畳む気配も見せずに「いきなりブチッ!」と連載終了になることがままあるので、荒川氏のこの姿勢やよし。(最近「ベルセルク」もどうなるのか不安なのですよ)

どうなるのか、必ず最後まで見せてくれ!必ず最後までつきあうので。

2007年9月 3日 (月)

毎日かあさん-出戻り編ー

Nec_0003_2 「20年間

うそ話ばかり

作ってきたのに

私は

この日のために

自分の子供に

するウソを

用意してない。」

もう、ここで涙が噴き出ます。「毎日かあさん・出戻り編」(既刊4巻・西原理恵子著・毎日新聞社)

今年の3月20日、元だんなさんの鴨志田穣氏が42歳の若さで癌で亡くなり、その枕元で泣き続ける西原氏。彼女を見守る子供たち。

「泣いて腹がふくれるかあ!笑え~~~!!」とは、彼女の大傑作「ぼくんち」の中の名言ですが、その彼女が涙を止められない。

「子供達が最初にしてくれたことは

私を笑わすことだった。」

「神さま

私に

子供を

ありがとう。」

彼女のマンガはすごくおもしろくて笑えるのに、油断すると胸が痛くて息ができなくなるような悲しみが笑いの下から顔を出すのです。

「鳥頭紀行シリーズ」で鴨志田氏と出会ってからの、壮絶なる結婚生活。それを知るファンもそうでないファンも涙なくしては読めない一冊です。決して「お涙頂戴」が目的ではないのに。悲しみに打ちのめされます。

2007年8月26日 (日)

山田太郎ものがたり

Nec_0073 TVは見ないのですが風のうわさで「山田太郎ものがたり」(全14巻・森永あい著・角川書店)がドラマ化されたと聞き、思わず倉庫の中からマンガを引っ張り出してきました。これ、ときどきむちゃくちゃ読み返したくなるんですよ。まるでラーメンやカレーのよう。

物語そのものがむちゃくちゃ庶民的なんだよな。いや、お話の舞台は「超ブルジョア高校」てことになってるんだけどさ。主人公の山田太郎が(この名前!)「成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能、されど貧乏・・・・。」て設定になってるもんで(笑)。兄弟10人ぐらいいるし。

その太郎の貧乏サバイバル生活を、やけに微に入り細に入り描いて見せたという。「花より男子」と共通点があるけれどお話の展開はまるで違う。あれもなかなかですが好みとしてはこちらなんですわ。(あ、そういや「山田太郎ものがたり」と「花より男子」どちらも台湾で先にTV化されたんだよな。それでF4という美形男子グループが生まれたとやら。そちらのほうが見てみたいなあ。)

「山田太郎ものがたり」に軍配を上げるのは、なにせ女の欲望を(金銭的なもの、性的なもの)をリアルに描きながら、これっぽちも湿ったところ暗いところがないという森永氏の資質が凄いと思うからです。これほどカラリアッケラカンと描かれるともう舌を巻くのみ。なんか「大陸的」とでも言いたくなるようなおおらかさ。これが最初に中国語圏で映像化されたのもわかるような気がするのです。中国語がむちゃくちゃあいそう。森永氏も中国ごひいきの様子。なんせこの学校修学旅行に中国に行ってるぐらいだし。

さて、わたくしのごひいきキャラは「太郎の親友にして茶道家元の息子・御村」なのですが。TVじゃ誰がやってるのですかね。この「すっとぼけたクール」の味はなかなか難しいと思うのですが。

2007年7月 5日 (木)

ヨルムンガンド

Nec_0013 「戦争はするな」が持論です。

人道的な問題ももちろんですが、何よりかにより「損をするから」です。こう言うと「軍が開発する最新技術」だの「兵器流通による経済効果」だの「軍隊による雇用対策」だの(あと「戦争による地球上の余剰人員の整理」とか)たわごとを並べるオオバカ野郎がいますが、阿保か!

地球資源のトータルで見たら必ずマイナスになるに決まっとろうが!!軍隊は天文学的なハイコストで消費するのみ。決して生産はしない。「戦争による経済効果」をいうやつは「日本の土地は狭いから決して値下がりしない」とか言ってバブルを招いた連中と同じレベルでしょう。「人間が作った社会の、そのまた20世紀のごく一部の国が押し付けた価値観(ぶっちゃけて言えば某米国ですか)」にどっぷり浸って、その世界でくるくるくるくる独楽鼠みたいに廻って悦に入ってる連中。自分が廻るのは勝手だけれど巻き込むのは勘弁してよ。

動物の本能として闘争本能が仕込まれていることは(特に雄に)理解します。というより鶏なりヤギなり動物を飼うということは雄の闘争本能と雌の生殖本能をコントロールすることなので、雄の闘争本能がどんなに厄介なものか身に沁みてますわい。持て余した闘争本能のやり場に困ってる人間の雄が「戦争みたいなお祭りがあったらどんなにすっきりするだろう。」と妄想にふけるのも勝手。それが妄想である限りは。マンガでもTVでも映画でもケームでも妄想結構!!とことんやれ!やれ!だ。ウォーゲームは大好き。だからバーチャルの規制には反対。規制の筋が違うでしょう。

というわけで「ヨルムンガンド」(既刊2巻・高橋慶太郎・小学館)です。

こうきましたか~~~!これだから小学館は油断がなりません。少年誌でこれをやりますか。まあ、少年誌だから表現を曖昧にぼかしているところもありますが(死体とかね)。このテーマだったらそれをぼかしたらいかんのに、規制があるんだろうな。だから逆効果だっちゅうの。

話は東欧の内戦で両親を失くして「武器を限りなく憎みながら、武器を握りしめる」少年ヨナが、ココ・へクマティアルという若い(女性の)武器商人にスカウトされるところから始まります。ココと一癖も二癖もある小隊のメンバーとヨナは、世界の火薬庫を巡りながら旅を続けます。「武器を憎みながら、片時も放せない」自分に引き裂かれながらも、天才的な戦闘能力でココを守り続けます。ココはどうやら世界的な海運王の娘で、幼い頃から学校にも行かずウェポン・ディーラーとしての英才教育を受けてきたらしい。かんしゃくもちで気分屋でわがまま。でも頭の切れがよく商才抜群。なにより妙にチャーミングで魅力的。(そういや「へクマティアル」って北欧神話の商売の神様じゃなかったっけ?うろ覚えだけど。)

話はまだ始まったばかりで、背景もまだ全貌を現してないのだけれど、どうなるんでしょう?これ。「非生産活動の最たるものである戦争で、経済活動を営む」武器商人という矛盾した商売。あ、そういや2巻で「矛盾の語源」についても出てきたな。例の古代中国の「矛と盾を売る武器商人」というやつ。こういうところが作者高橋氏は、どうにも只者ではなさそうで。ちょっと3巻が楽しみなのです。