「 今注目のピアニストが主人公のマンガ」となると、前述の「のだめカンタービレ」とは別に「ピアノの森」(一色まこと著・既刊10巻・講談社)を無視できんのですわ。
「のだめカンタービレ」が”女性誌掲載にもかかわらず青年誌テイストが濃い”ピアニストものなら、「ピアノの森」は”青年誌掲載にもかかわらず女性誌テイストが濃いのである。
だいたい主人公のカイが人格者である。ほとんど聖者に近い。一応出生が「森の端」という娼婦街で、娼婦を生業とする未婚の母から生まれたことになっているが、すでにこの母が天使。ある意味「聖母マリア」。母と住むバーのそばの森に捨てられたグランドピアノがあって、物心つく前からこれをおもちゃにして育ち、生来の才能が開花したという設定。話は彼の小学生時代から始まっていて、そこに血統書つきのピアニストの卵雨宮(父親が現役ピアニスト・いいやつ)が転校生としてやってくる。天才ピアニストだったが事故で挫折した音楽教師阿字野(いいひと)もからみ、あくまで自分の天才性に無自覚のカイを、寄ってたかって目覚めさせようとする・・・・・。「こういう設定どっかで見たよなー」と、はたと思いついたのが「エースをねらえ」。
主人公=無自覚の天才=岡ひろみ=カイ
ライバル=血統書つき秀才=お蝶夫人=雨宮
それに挫折した元天才のコーチ=宗方コーチ=阿字野
〈阿字野はまだ死病に取り付かれてる様子はないが)
・・・・・ね?ぴったりじゃっどが。
このパターン比較は「エースをねらえ」を「ガラスの仮面」に代えて
北島マヤ―姫川亜弓―月影先生にしても可。
つまり「ピアノの森」は一昔前のど根性少女マンガの黄金パターンを見事に踏襲しとる訳よ。無自覚の天才に血統書つきが「どんなに血のにじむような努力をしてもぜってえ勝てねえ。」ところなんかもそのまま。「女性誌テイスト濃いなあ」と感じて当然である。でてくるキャラのほとんどが善意の人だし。無自覚の天才に何の見返りも要求せずに、その才能を育てようとしてくれる。それもそのまま。
しかし決定的に違うところがひとつだけ。それは温度。ど根性少女マンガは「そこまで熱くなくても・・・アチチチやけどするわい。」というぐらい熱血だったが、「ピアノの森」はぬるい。けなしているのではない。それが心地いいのである。賢明なお客様諸氏にはすでにおわかりであろうが、「ピアノの森」は本来のわたしの好みの範疇ではない。しかし、このぬるま湯のような「長く浸かってても心臓に負担かかりませんよ」というような毒気のなさがたまらん後を引くのでありますよ。
「ダントツとはいえないが無視できない。」ちょっと不思議な位置付けでありますが・・・。それが作者一色まこと氏の狙いだったりして。んで、見事にはまってたりして。
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