螺鈿迷宮
「螺鈿迷宮」。最近お気に入りの海堂尊の白鳥・田口シリーズの番外編です。
番外編とはいえ、今まででてる中じゃ一番身につまされておもしろかったなあ。危険な書だ。
なんと言ってもね、悪役の桜宮病院のメンバーが魅力的過ぎてさ。「死にたいやつは死なせてやれ」と嘯く戦中派(軍医経験アリ)の巌院長からして「うんうんそうだそうだ」という説得力満載。
そう「死にたいやつは死なせてやれ」。わたくしもそう思います。無理やり生き延びさしてなんとする?「生きてるってすばらしい」と思えることができないやつに何の権利があって生きることを強要する?
寝たきり認知症の祖母の介護を5年しました。その間祖母は「死なせてくれ、殺してくれ」と数限りなく訴えていました。でも殺すことはできなかった。日本の法律がそれを許さないから。
それについての実に魅力的な解決法を「闇の桜宮病院」が提示してるの。法律でなく「黄泉の女王」が支配する世界でのみ有効な手段だとわかっていても、とてもとても心魅かれる手立て。ううううん、ほんとうに危険だ。
向こう側が闇に霞んでしまうほど並べられた解剖臓器入れの青いバケツのイメージといい、永遠に続く螺鈿細工の壁の部屋のイメージといい、ひんやりと冷徹でありながらとても清潔。
白鳥が巌院長を評したセリフ「巌先生は桜宮の闇を支えてきたんだね。それも極めて誠実に」というのが良かった。強い光の影には濃い闇ができる。生きるってのはそういうことだもんなァ。重いテーマをよくここまでわかりやすく書いてくれたよなあ。
あと、白鳥の部下、氷姫・姫宮が大活躍!一見アニメのフィギアかサイボーグみたいな美形なんだけれど、これがまた出来損ないのサイボーグみたいな一般人とはズレまくった挙動の数々、一見の価値アリ。全体的に暗いトーンで貫かれた本作の中で、姫宮の明るくド外れた破壊力はすごい!よくこんなキャラ思いつくよなあ。いつもいつも思う。「こんな連中の棲息・出没を許す大学病院てどんなとこよ?」
シリーズを読んでない方にもお勧め。この本から初めてもよし。おもしろいぞお!
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