椿屋敷のお客様

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2007年8月11日 (土)

香水ーある人殺しの物語ー

Nec_0061 ものの本によれば五官のうちでも嗅覚は最も脳の言語野から遠いのですと。そのかわり恐怖と快楽を司る場所には最も近い。つまり一番原始的な感覚なわけでありますな。

人間は視覚のみを極端に発達させたために、嗅覚が恐ろしく鈍ってしまった生物だと申します。かもしれぬ。うちの犬のモモなんかただの雑種ですが、彼女の感覚にはまったくついていけません。月も星も無い闇の夜、はるか庭畑の遠くに侵入してきた小動物の気配を、いったい彼女はどうやって探知するのでしょう?決して視覚ではない。聴覚。そして嗅覚。彼女にとって何の変哲も無い山中の空気は、さまざまな糸や平面をおりなす臭気の塊なのでしょう。その世界観、想像を絶します。

というところで「香水ーある人殺しの物語ー」(パトリック・ジュースキント著・池内紀訳・文春文庫)です。

いやーーーーーおもしろかった!昨今読んだ翻訳物の中ではぴか一でした。ちょっと前に「パフューム」というタイトルで映画化されたんですよね。でも映画を見ようとは思わないな。ネタばれになるので書きませんが、『ああ、これ映画監督なら映像化したくなるだろうな』という超絶シーンがあるのですよ。でもテーマが「嗅覚」だけにね。「映画」という「視覚最優先。ちょびっと聴覚」だけの娯楽では、どんなに優れた映像でも文章から想起する妄想の嗅覚のほうがなんぼかすばらしかろうかよ、と思っちゃうのです。

お話は革命前夜のどこもかしこもむちゃくちゃ臭い街パリに産まれた、「人間離れした超絶嗅覚を持ちながら、自分自身の体臭を持たぬ男」の一代記なのです。むちゃくちゃ文章がうまくて、「犬の世界を文章化したらかくもあらん」という説得力のある描写。思わず自分の鼻をくんくんしちゃいました。やっぱり香りってのは大事だよ。たとえ意識の上になくても、必ず無意識の中に記憶されてる。それが香り。人口香料で鼻をつぶすような真似は決してすまい、と思わされましたね。だって「色気」にダイレクトに影響するのが香りなんだもん。

構成もうまくて「おお、こうきたか~~~!」のどんでん返し。久しぶりに一気読みしてしまいました。おすすめでございます。

2007年2月 9日 (金)

ナショナルジオグラフィック〈日本版〉

Nec_0022_27  「いかにも」と思われそうですが「ナショナルジオグラフィック」(日経ナショナルジオグラフィック社刊行)の日本版が創刊されて以来ずっととっています。

日経は腐った会社なので金を出すのはたいへん業腹なのですが、「ナショナルジオグラフィック」と「サイエンス」を出しているので、「しょがねえなあ」と思いながら毎年4月にまとめ払いしています。なぜだ。他の新聞社や出版社はなんでこんな確実に部数を稼げそうな雑誌の版権が取れなかったんだ?

なにせ「全世界で一番売れている雑誌」。ご存知の方も実際ご自分でとってらっしゃる方も多いと思いますが、一から十まで「写真・写真・写真」の雑誌です。それも世界でもトップレベルの。しかも辺境とか紛争地域とか「まーず一般人では行けませんなあ」という場所の写真がふんだんに。

アメリカが力を持ち始めた前世紀初めに創刊されて以来、世界中のありとあらゆるところに特派員とカメラマンを送り続けて撮り続けた記録と写真を持っているから、その百年分の記録も参照しながら、「いったいどうしてこうなったのか?」をヴィジュアルで見せてくれる。人間てのは(ちゅうかわたくしは)たいへんヴィジュアルに弱いので、写真で「こうだ」といわれると「ふーん、そうなのか!」などと簡単に納得してしまいます。我ながらまったくもっていい「お客さん」です。

学術的な文章を読む根性はない人間に、ふんだんな写真でもっともらしいことをわかりやすく書いてくれているナショナルジオグラフィック。「自分はこれを読んでいることでさもしいインテリ意識を満足させているんじゃないか」というジレンマに陥ったりするのですが、どうにもとるのを止めることができません。

・・・・・・・とまあ、考えてもしょうがないことをうじうじ悩むより、「うわああ、きれいな写真だなあ!」と素直に楽しもうかい。いや、ほんとうに写真がすばらしいのです!

2007年1月23日 (火)

サカタのタネの家庭園芸

Nec_0048_3 父が植木屋なもので(いまや休業状態ですが)、小さなころから毎月うちには「サカタのタネ」から「園芸通信」と「家庭園芸・春」と「家庭園芸・夏秋」が来ていました。

日本の種・苗屋の第一人者「サカタのタネ」が全力で開発している新品種がいち早く載っている優れもののカタログです。眺めているだけでワクワクします。

たとえば「香りを楽しむバラ」の欄を見ると「楽園(品種名)。光沢のあるオレンジ色とフルーティーな香りがすばらしい、剣弁高芯の大輪花。春から秋まで、安定した花色を保ちます。(花径約12cm/直立性/樹高1.2~1.5m/強香)」とか書いてあるわけです。それでもって美しいオレンジ色のバラの写真が載っているわけ。

どうです?思わず自分ちの庭に美しく咲き誇り、春から秋までプンプン香りを漂わせるバラの花を想像してしまいますでしょ?曲者なんですよ、このカタログは。

「トマト」の欄を見ると「こんなに甘くて、おいしいトマトは初めて」と煽り文句がついていて「アイコ ミニトマト(品種名)。家庭菜園で大人気のプラム型ミニトマトです。愛らしい形と群を抜くおいしさ!酸味が少なく、口の中に甘みが広がります。肉厚でしゃきっとした食感。皮も割れにくく、作りやすさも折り紙つきです。極早生種 平均果重18~25g」ときたもんだ。ご丁寧に欄外記事に「たくさん採れたらドライトマトがおすすめ」とドライトマトの作り方が載っていたりするわけです。

ねーーー?たまりませんでしょ?

珍しいフレンチ野菜とか中華野菜とか外国ものの野菜もいち早く取り上げてくれるし、本当に優れもののカタログなのです。

もちろん「サカタのタネ」はネット販売もやっているし、いまや自分もネットで注文するわけですが、このカタログはやめられません。ネットにはない紙のカタログにはカタログの良さがあるんだよなあ。

2007年1月13日 (土)

農場の少年

Nec_0034_22  「ローラ・インガルス・ワイルダーの物語」は有名ですが、一番好きなのは番外編ともいうべき「農場の少年」(福音館書店・恩地三保子訳)です。それもガース・ウィリアムズの挿絵つきのやつ。ガース・ウィリアムズは動物の絵のうまい人で、この表紙の子牛たちの絵にガツンとやられました。ばりかわい――――♪

「農場の少年」はのちにローラの夫となるアルマンゾの少年時代の話なのですが、まあ、出てくる食べものという食べものがそらまあおいしそうで。今のアメリカの姿からは想像もつかない古きよき時代のアメリカ。

本編ともいうべきローラの家族の話は結構深刻な貧乏の話で、飢えがまじかに迫る話もリアルで読むのが辛かったりするのですが、この「農場の少年」は徹頭徹尾豊かな農場生活の一年が描かれていて楽しい。

そしてやっぱり挿絵だなあ。ガース・ウィリアムズの挿絵を使っているのは福音館書店だけで、ハードカバーだけだったのが新書版がでて「ちゃんと全部イラストはいっているのかな」と心配だったのですが杞憂でした。ページの合間の小さなイラストまで全部再現されていてむちゃくちゃかわいいです。

もしローラのシリーズをそろえるのならだんぜん福音館書店のをお奨めいたします。

2007年1月 6日 (土)

さおだけ屋はなぜ潰れないか?

Nec_0012_23 わが椿屋敷農園のポリシーは「ローコスト・ローテクノロジー」です。

とにかく「コストをかけずに」「設備投資も最小限で」やっていこうと思ったのです。「最初から大もうけはしなくても、できることからはじめて10年、20年と淡々と長く続けていこう」と。

なんとか続いているのはほんとうにお客様のおかげです。ありがとうございます!

とかなんとかいいながら、今年もそろそろ確定申告の時期が近づいてきております。想像がつくかと思いますが、わたくしこれが大の苦手。「毎日こまめにつけておけば、ぜんぜん困らないよ」と会計の資質のある方はおっしゃいます。結局そういう毎日の地道な努力しかないようです。

なにはともあれとりあえず、会計についてさわりだけでも読んでみよう、と評判の「さおだけ屋はなぜ潰れないか?」(山田真哉著・光文社新書)を読んでみました。

むちゃくちゃおもしろかったです!

枕が「さっぱり売れているとは思えないのに、全国的に何十年も存続している「さおや~さおだけ~♪」のさおだけ屋の謎。あと住宅地にぽつんとある、お客がほとんど入っていない超高級フランス料理店の謎。とかね。「いったいどうやって商売の元を取っているの?」という商売のからくりを本当にわかりやすくおもしろく書いてくれています。もちろん会計のプロとしての視点から。

各章ごとのポイント・ワードがまとめられているのですが、それなど会計のみならず「そうだよな。人生って生活って、こうじゃなくっちゃな」と座右の銘になりそうな名言がぎっしり。

特にうーーーんと唸ったのが「名刺を配りまくっても人脈にはならない。100人の知り合いを増やすより100人の人脈を持つひとりの人物と深くしっかりとした関係を作れ。すでに知っている小数の人物を大事にするべし。」という言葉。

まったくそうだよなあ。

あと「ローコスト・ローテクノロジー」の考え方が、会計のプロから見ても正しい考え方らしいので、勇気百倍。

今後もぼちぼち淡々ながながと続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2006年12月21日 (木)

町長選挙

Nec_0035_19 泣かせるのは簡単で、怖がらせるのはテクニックがいる。でも笑わせるのが一番難しいですね。

「お笑い」というのは一番文化の違いがでてしまう感情じゃないでしょうか?第一言葉が違うと「今世紀最高のギャグ!」とかいわれてもぜんぜんおもしろくありません。アメリカン・ジョークってなにが面白いのかさっぱりわからん。フレンチ・エスプリも同じ。

関西にいたので「ヨシモト」をむちゃくちゃオモロイ!と感じますが、果たして日本全国の人々があれを面白いと感じることができるのでしょうか?大阪言葉のなんともいえないニュアンスがわからないと、ただただ「べたべたしてしつこくて気持ち悪い」ばかりなのではないかと・・・・・。「お笑い」は受け取る側の素地にも共通するものを求めるのです。

ああいうアクションが入ったお笑いでもこうなのですから、「活字で笑わして金を取る」というのはたいへんな離れ業であると思います。「笑える文章を書ける人」というのはすごいです。今、日本語で一番笑える文章が書ける人は「町長選挙」(文藝春秋社)の奥田英朗氏ではないでしょうか。

「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続く「精神科医・伊良部センセイシリーズ」の第三弾。前作「空中ブランコ」で直木賞をとっちゃったんだよね。

日本医師会のえらいさんの息子で、でぶっちょで、注射マニア、なに考えてるんだかさっぱりわからない大人子供の精神科医伊良部センセイは、あいかわらず元気。今日も今日とてピチピチミニの看護婦マユミちゃんを引き連れて「一挙手一投足をあげつらって非難される棺桶ノイローゼの球界のドン」や「ひらがなが書けなくなった小太りのIT長者」や「若作りが強迫観念になった女優」なんかを強引なマイペースに巻き込んで、いつの間にか治している伊良部センセイ。

見たとおりの天然なのか、それともわかっててやってるのか。絶妙のタイミングで絶妙のギャグをかましながら、伊良部センセイは今日も行く。ここらあたりのはずし方が奥田氏の筆の冴えどころ。こんなふうにワラかすタイミングを文章だけで(!)表現できるのはすごいことですよ~~。

タイトルの「町長選挙」編は、「一島全体が町長選挙に燃える島に派遣された都会人の公務員」のノイローゼを治す伊良部センセイのお話。まるで徳之島を思わせるこの島では、島全体が前町長派と現町長派に分かれて、現ナマ・脅迫・策略飛び交う熾烈な町長選挙を繰り広げています。こんな、まるで現代の日本とは思えないような民俗社会でも伊良部センセイは超マイペース。このギャップとバランス。すばらしい!

忙しすぎて落ち込むことの多いこの年末、おかげさまで声を出して笑うことができましたです。

2006年12月 2日 (土)

週刊朝日の世界の食べもの

Nec_0007_20 30年ほど前に朝日新聞社が画期的な企画を始めました。

それがこの「週刊朝日の世界の食べもの」シリーズです。

世界中の食べものを国ごとテーマごとに網羅し、週一で冊子を配達、10冊ごとにバインダーに入れると百科事典の体裁になるのです。全部で200冊近くあります。

もちろん美食の都パリや中国の特集もあり、アラスカやニューギニアの辺境の食べもの事情もあり、日本編は一冊ごとに県特集あり、・・・・・・・・・いわばマンガの「美味しんぼ」の「究極のメニュー」を先駆けて実行したシリーズでした。

まあ、うちの両親も食い意地が張ってるなあ。これを揃えちゃったんだもん。

そのままわたくしがもらいました。ありがたい。暇びまに眺めては「ああ、コレが食べたい~~。アレが食べたい~~。」と涎を垂らしています。

2006年11月23日 (木)

バッテリーⅥ

Nec_0026_22 「ふうう―――――っ!」

「バッテリー」(全6巻・あさのあつこ著・教育画劇もしくは角川文庫)を読み終わったとたんに溜め息が漏れました。

なんというお話だったことでしょう!さんざん小説やマンガで使い古された「野球」を使い、しかも甲子園には程遠い中学校。地方都市。それなのにこの斬新さ。躍動感。感動。

まったくもって物語というのは設定や世界観だけではどうにもなりません。キャラクターです。有機的に絡み合うキャラクターの性格や思惑やなにやかやこそが物語を動かす原動力となるのです。

それにしても、このほとんど少年ばかりがでてくるお話の作者あさのあつこ氏は、少年とは対極にいるある程度年齢の行った女性です。

母親なのです。

現実に男の子を育て上げた経験をもつ母親。

これは強いね~~。「バッテリー」シリーズを読んでつくづく思いました。ある程度文章やマンガを書く女にとって、「少年たちを描く」というのはすごく誘惑の多い衝動なんですよ。だいたい「いくらなんでもそれはないだろう?」といかにもな失敗に終わるんですけどね。男の作者が「理想の少女像」を描こうとして女からしたら「ケッ」と思わせる妄想に終始してしまうのと同じ。

これがさ、男の子の母親となって、現実に成長していくさまをつぶさに見てきたとなると、まあ、リアリティが違うわい。これからこういう作者や作品が増えてくるんじゃないかなあ

たとえば「ヒカルの碁」(ほったゆみ・小畑健著・集英社)。あのマンガが少年漫画の牙城少年ジャンプに殴りこみをかけてきたときにゃ~たまげましたよ。「碁」ですよ。しかも原作者は「お母さん」。それまでの少年漫画の作者とはかけ離れてます。ましてや少年ジャンプは漫画家志望の少年を10代から囲い込んで育てる虎の穴の草分けとして有名なところだったし。あくまで「お母さん」をやりながら地方都市からFAXでネームを送る。生活が一番でジャンプでの常識だった「一日3時間睡眠」とかは決してしない。でありながらあのクオリティ。

マスコミとか出版界とか、ほとんどが東京にあります。いっちゃあなんだけどちょっと狂った世界じゃないかな?地方都市や普通のご家庭とはまったくペースが違う。でも、日本のほとんどは地方都市で普通のご家庭なのです。本を読むのもそういう人たち。

たぶん、これから「ものを書く人」の中に「地方都市在住で普通の家庭生活をやっていて、子育てなんかも一段落したお母さん」が参入してくるのが増えてくると思います。

そしてそれは凄くいいこと。ガキにゃ~書けない世界を、見せてくれる人たちが増えるということ。

なんだかとても楽しみになってきたぞ。

2006年11月22日 (水)

バッテリーⅤ

Nec_0025_25 バッテリー(あさのあつこ著・教育画劇もしくは角川文庫)もあますところあと二巻。最初に読んだときは「あああ、もうあと二巻しかない。読み終わりたくない・・・・・でも、早く、早く続きが知りたい」とジレンマに陥りました。

このⅤでは巧と豪のバッテリーより、温厚だが鋭い突込みを入れる海音寺キャプテンと、天才スラッガー門脇と、その傍で「影の策士」であり続けた瑞垣、の三者の関係がクローズアップされてきます。

特に瑞垣の屈折ぶりがおもしろい!

門脇とは幼馴染で、誰よりも早く門脇が天才であることを見抜き、こと野球というフィールドにおいて余人では彼に追いつけないこと、「努力では超えられないものがある」ことを齢15にして骨身に沁みている男。もう、門脇のことを「愛しているんだか憎んでいるんだかわからない」状態にまで煮詰まっています。

瑞垣の不幸はここまで追い詰められながらも、それを表に出せないプライドがあり、しかも出さずともやっていけるだけの頭の良さがある、というところでしょう。

学校や大人たちの干渉を受けずに、自分たちの手で開催する「新田東と横手の試合」の企画の実現に海音寺と瑞垣は奔走します。頭の回転のいい瑞垣は、こういう社会性とか企画力とかに長けていて抜群に要領がいい。「自分の本心を表に出さずに要領だけで物事をクリアーする」ことに慣れきっていた彼に、一見天然ボケっぽい海音寺が要所要所で鋭い突込みを入れる。ここのところの呼吸がなんともいえずおもしろい。

結局、海音寺やそしてⅤのラスト近辺でお遊びで対峙した巧と豪のバッテリーによって、とうとう策士瑞垣の鉄壁のガードがほころび本心が垣間見えるのです。

「いとしい姫さん(巧)をめった打ちにして、マウンドにひざまづかせて泣かせてやる」と、いい続けた彼の本音は?

この口から生まれたような瑞垣と、舌鋒でいい勝負をするイガグリクリノスケこと吉貞もいい味出してます。

2006年11月20日 (月)

バッテリーⅣ

Nec_0024_24 この巻で、「バッテリー(あさのあつこ著・教育画劇もしくは角川文庫)シリーズをもっとも児童文学から遠くする男」瑞垣登場。

天才スラッガー門脇の幼馴染でチームメイト。頭がバリバリに切れて、屈折していて、性格が悪い。新田東と横手の試合のときに、的確に巧と豪のバッテリーの弱点を見抜き、往年の野村捕手のようなつぶやき作戦で、豪の動揺を誘い、そこから巧も崩れ、生まれて初めてのめった打ちを味あわせてしまう恐ろしい男。

こういう男を児童文学で、しかも中学三年という設定でもってくるかあ?(笑)

しかも、その頭の良さとか能力に比して、瑞垣のおかれている状況はきっちりいまどきの中学三年だし(笑)。そのリアルさが「ああ、こんな頭のいい男がこんな状況に置かれてたら屈折するよなあ・・・」という説得力につながっております。

後半のバッテリーシリーズをもっとも盛り上げる男です。

そして新田東の巧や豪の同級生チームメイト、吉貞。こいつがまたただの気の強い野球少年ではなく、頭の回転の舌の回りも速い漫才男だということが判明。

瑞垣と吉偵のやりとりは一見の価値あり。爆笑すること間違いなし。

肝心のバッテリー、巧と豪は「恋愛の一番最初の時期が過ぎて、他人と付き合うことの恐ろしさがわかり始めた時期(笑)」に入ってしまった模様で、豪、思い悩んでおります。巧の球を受けることができなくなっております。どうなるんでしょう?バッテリー。