京都にいた頃、大阪女の友人が血相変えて聞いてきたことがある。「春ちゃん!これほんま?!」それは、ちょっと見お堅い論文のようであったが、中身はとんでもなかった。つまり、一昔前の我が鹿児島南薩地方の恋愛事情を、(明治のことだ)民俗学的に論文にしたものであった。いわく、この地方では婚前のセックスも、婚後のセックスもぜーんぜんタブーではなかったのである。鹿児島のご多分に漏れず当時の南薩地方は農村もいいところであったが、年に何回か祭りの時に「歌垣」という催しがあり、はないちもんめのごとく男列と女列に別れ、その双方から代わる代わる歌い手がでて歌い、お互いその歌が気に入ったら、その場で暗がりに消えて、何でもいいことをしてよろしかったのである。その場では、相手の身分も年も亭主持ちだろうが女房持ちだろうがいっさい問わないという、暗黙の了解があったんだそうな。どうよ。「ほんまなんか?これ?春ちゃんやったことあるんか?ええなあー。」と言われてもねえ。それ百年以上も前の話で・・・・もごもご。その時思いましたよ。私らは昔の農村を誤解している。農村って真っ黒になって、なーんも楽しいことなくて、制限ばっかりで、お堅い道徳に縛られて・・・・って。冗談じゃない、この論文が本当なら、少なくとも「ナンパ」ってことに関しちゃ、百年前の方が豊かじゃんよ。今の鹿児島でナンパできるとこって?天文館?それともコンビニの前?ラブホテルすら、わけわからん反対するおやじやおばさんうじゃうじゃいるのに。当時はその、おやじや、おばさんも当然のようにその「歌垣」に参加権があるわけよ。
そりゃうるさいことはいわんわなあ。椿屋敷農園の「農園は健康的とかエコロジックとかいう以前に、エロティックである。」と言う主張はここからもきております。
80歳を過ぎてなお歯が二十本ある、おじいさんから聞いた漢方薬であります。作り方は簡単です。はこべ(春から夏にかけてそこら中にはえる。うちの畑にもはびこり、往生しております。はびこるから「はこべ」という説あり。)をひとかかえとってきます。それを、水洗いしてからミキサーにかけます。ふきんでこして、緑色のはこべ汁を作ります。この汁と海塩をフライパンに入れて炒ります。そのうち塩が結晶化して、エメラルドグリーンのはこべ塩になります。これが、歯茎を引き締めるのに、とてもいい薬なのです。母が、長年の歯周病から、総入れ歯の危機になったとき、このはこべ塩を作ってあげて、歯磨きしてもらいました。二ヶ月で、歯医者さんから「歯茎が引き締まってきたねえー」と言われたですよ。はこべは今の季節そこら中にあるので、歯茎に不安がある人は作ってみたらいかがでしょう?
うちは「鹿児島市のチベット」と呼ばれる山の中なので、鶏を飼うときイタチや狸やその他もろもろが心配だったのね。それどころか猫二匹を飼ってるから、きゃつらのいい餌食か?とちょっと心配だった。ある人が「鶏の番は犬にさせなさい。犬の感覚と忠誠心は人間の下手な防御よりよっぽどあてになる」って。で、試しにモモ(紀州犬雑種四歳女の子)に
「モモ、あんただけが頼りなのよ。頼むからこの子たちの番してて。」と頼んでみたわけ。いやあびっくりしたね。モモはお手もお座りも伏せも待てもいっさいできないんだけどさ、それはそれは熱心に鶏番をしてくれるわけよ。というより「もう夢中!」ってかんじ。片時も離れず、ずっと見てるし、猫たちがそばを通ろうとすると、血相変えて追いかける。うれしい誤算でしたわ。この調子だともうちょっと鶏が大きくなったら、頑丈な金網を張らなくても、モモに任せておけばオッケーですわ。中国じゃあアヒル番を犬がすっるっていうしな。
地鶏くんたちがどんどん大きくなっているぞ。春の木市で雄一羽雌四羽買ったんである。
地鶏の庭先卵、うまいのよこれが。黄身がまっきっきで、もりあがってて、白身が濃くて、タンパク質ーってかんじ。もー楽しみで楽しみで。だいたい食べてるものがちがうもんな。無農薬なんでキャベツの外葉に青虫が付いてるんだけど、その葉のまま食べさせてる。青虫を見つけると大騒ぎで、奪い合い。「こいつらほんと肉食」て思うもん。ちょっと前雌の一羽が怪我したら、あっという間にみんなでよってたかってつついて、のどと砂嚢に穴が開いちゃった。餌や水がぽろぽろそこからこぼれてくるの。人間で言えば食道が破れたようなもんよ。それで生きてるのもすごいけど、穴をマキロンで消毒して、医療用接着剤でくっつけて、布テープで巻いてたら、三日でふさがっちゃった。なんちゅう生命力。こういうのが産む卵だから、そりゃー栄養あるはずだわ。ふっふっふ味はまた報告いたします。
「耕して育てて食べる快楽」がテーマのページです。亡くなった祖母の家に庭と畑が付いてましてね、そこで花と野菜とハーブを育ててるですよ。卵が欲しくて地鶏も飼ってますですよ。ミルクが欲しくて山羊も飼う予定ですよ。スーパーで買う野菜は味がしないでしょ?そういうの、でも、庭で作った野菜を直で食べたことないとわかんないんだよね。今キャベツが大きくなってるんだけど、キャベツなんかもー全然うってるのと違う味だよ。キャベツの匂いがちゃんとしてぱりぱりでさ。生で食べても最高。豚と炒めてホイコウローなんか、もう絶品。このおいしさを、この世の食いしん坊さんたちに問いかけたいのよ。「おいしいものが食べたくないか?!生命力のあるものを口に入れるときの、快楽に近いまでの心地よさを味わってみないか?!」食べることと、セックスはとても近いでしょ?ずっと思ってたんだよね。農園って健康的とかエコロジックとかいう以前に、実はすごくエロティックな世界だよなーって。その何とも言えない色気をですね、皆さんに味わっていただきたくて、とりあえず、うちのささやかな畑で採れる、旬の食べ物を、あるいは昔からの薬草や美容品を、紹介していくために、このページを作りました。なにとぞよろしくお願いします。
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