開き直って寝転がって本とマンガを読みまくった昨日でありました。その姿氷上に転がるトド、アザラシの如し。人さまには見せられず。
ずっと読みたかった「アルジャジーラ」(ヒュー・マイルズ著・河野純治訳・光文社)です。
イラクで日本人が人質になったり、残念ながら殺されたり(ご冥福をお祈りいたします)、した時に、必ずこのアルジャジーラという衛星TV局がゲリラに向けて人質解放の呼びかけを放送してくれましたよね。「BBCでもCNNでもない、カタールの小さな民間放送らしいのにアラブ世界には凄い影響力があるんだな。」と俄然興味をひかれました。
そういえば9.11事件以降トチ狂ったブッシュ・ジュニアが「アルカイダ殲滅、オサマ・ビン・ラディン抹殺」を唱えてアフガニスタン侵攻したとき、 世界のメディアの中でアルジャジーラだけが「ビンラディンのインタビュー(というかアメリカへの宣戦布告)テープ」を放送したし、アメリカ軍がただでさえギリギリの生活をしているアフガニスタンの民間人の施設を爆撃してるのもすっぱ抜いてるし、「フセイン逮捕」を唱えてイラク侵攻したときもやっぱりアメリカ軍のイラク民間人への攻撃や虐待をすっぱ抜いてたし、パレスティナのイスラエル軍の暴挙も出すが、自治政府(故アラファト側ね)の腐敗ぶりもすっぱ抜いていたんですよね。
中東についてまったく詳しくありませんが、世界の中でも有数にドンパチの多い地域だという認識はあるし興味もあります。それでまあ、手に入るニュースはそれなりに注意してみていると必ずでてくるのがこの、アルジャジーラ。
日本人人質事件のとき、日本政府が「自己責任」という「その使い方間違ってねえか?」な言葉で事実上同胞を救う何ら有効な手立ても打てなかったときに(アメリカだって役に立ってなかったじゃん)、あまり縁のないペルシャ湾の小国(天然ガスで裕福らしいけど)の放送局が、一肌も二肌も脱いで救出の呼びかけをしてくれて、香田証生さん以外は助かっている。「ありがたいこっちゃ」と思いませんでしたか?
もっとも中東に情報ソースの少ないNHKが、アルジャジーラの映像をかなりの高額で買っているらしいので、そこらあたりのご縁もあって尽力してくれたのかもしれませんが、それにしてもね。イスラム原理主義だのシオニズムだのインティファーダだの、余所の地域にはわからない、首を突っ込めないことが多すぎる中東で、民間人はもちろん政府関係者、ゲリラにまで信用されている放送局って何?
その疑問にこの本は答えてくれましたです。
要するに「アラブ人のアラブ人によるアラブ人のための真に民主的な放送局」なんですわ。
アルジャジーラは今でこそ名声を得ているけれど、とにかく設立当初から敵が多かった。周り中すべてが敵だらけ。なんとアラブ諸国ことごとくに敵視され、そのたびカタールは外交圧力をかけられたそうな。一般人には最初から指示されていたけれど民主的とはいいがたい他の国の首長にはたいそう煙たい存在だったらしい。自国の首長や政府にも噛み付いているらしいからそこのところ徹底してます。
アルジャジーラの基本方針は「一つの意見があれば違う意見もある」で、たとえばパレスティナ問題を出すときは、パレスティナ側、イスラエル側双方のもっとも過激な論客をだしてくる。そしてアルジャジーラはあくまで中立でどちらも裁くことをしない。報道機関として正しい、実にアッパレな姿勢ですが、これがパレスティナ、イスラエル双方に敵を作る。パレスティナ側は「イスラエルの犬」といいイスラエル側は「テロリストの味方」とののしる。なんだかなあ。
すべてがこの調子で、「どちらか一方にだけ肩入れしない」というその姿勢が「治安を乱す」と憎まれた。アメリカはその際たるもので、アフガニスタンにおいてもイラクにおいてもアルジャジーラの記者を理由なく逮捕したり拘束したりしたというから目も当てられない。それどころか支局を爆撃したり、記者を狙撃したりしている。もちろん名目は事故。あのなあ。アルジャジーラは最初から「アメリカ側の言い分も言ってくれ」と要請してるのにそれは無視して頭から「テロリストに味方する放送局は許せん!」の一点張り。「ファシスト国家を潰す」とか言ってる奴のほうが「ファシスト」じゃん。自由の女神が泣くぞ。
どんな妨害にも圧力にもめげず、アルジャジーラは揉め事の双方の意見を放送し続けました。結果「正確な情報をアルジャジーラだけは流してくれる」と一般の支持を得て、アラブ世界では№1の放送局となったわけです。たいした心意気じゃありませんか!
新聞の書評で「元気のいいトップ屋集団、それがアルジャジーラ」とありましたが本当にその通り。日本でもアルジャジーラの放送が見たいのに、なぜかスカパーでやってたのがなくなってるの。なぜ?
なんか都合の悪い事、隠してるんじゃないでしょうね?
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