柴田よしき氏も大好きな作家で、「リストの端から端まで」読んでしまいます。シリーズものもいくつかあるのですが、複数のシリーズにでてくる山内 練というキャラが出色のできですぞ。
山内 練(やまうち れん):女と見まごう美貌のヤクザ。悪魔的に頭がよく、センスがよく、残酷で守銭奴で、おまけにバイセクシャルときたもんだ。しかもヤクザに転落したきっかけがまったくの冤罪。それまで育ちのいい内気な理系の大学院生だったのに無実で刑務所に叩き込まれて、美貌のせいで女の替わりに犯されまくって運命がおかしくなってしまった。名家だった彼の家族もスキャンダルで離散の憂き目に会い、政治家目前だった兄は自殺。だから美しく残酷な顔の後ろに癒せない悲しみと怒りを背負っている――――
どうです?この設定だけでも女心を鷲掴みにされません?最初に彼が「村上緑子シリーズ」の「聖母の深き淵」ででてきたとき「やられた~~~~!!!」と思いましたもん。それ以来「山内は出てこないかな?出てこないかな?」と他のシリーズでも探してしまうありさま。「やるな、柴田よしき!」ですよ。こういうキャラは女性の作家じゃないと使いこなせないと思うな。はっきり逆性差別しちゃうよ。
この「花咲慎一郎シリーズ」・・・・・今のところ「フォー・ユア・プレジャー」「フォー・ディア・ライフ」「シーセッド・ヒーセッド」の三冊が出ていますが、三冊ともに山内がでてきます。だからというわけじゃないですが数多い柴田よしき作品の中でこのシリーズが一番すき。(実はもひとつ「猫探偵・正太郎シリーズ」てのがあって、これも最高なんだけど・・・ああ、甲乙つけがたい!)
主人公の花咲慎一郎もすごくいいんです。元警察官。正義感が強すぎてヤクをやっていた同僚を撃ち殺しちゃって「仲間殺し」の汚名を着て転落。ヤクザ御用達の泥の中を這い回る探偵になっちゃった。さらに、ふとした縁で、新宿二丁目にある「にこにこ園」という保育園の園長さんも引き受ける羽目に。水商売女性の子供達を引き受ける「にこにこ園」は慢性赤字。でも、元来花咲は素直でまっすぐな男なので、それはそれは幸せそうに一生懸命「園長さん」をやってるの。んで、「にこにこ園」を維持するために「副業としての危険な探偵業」を続けているというわけ。
ただでさえ「24時間営業の保育園の激務」の上に「ヤクザがらみの探偵仕事」が重なると、「花咲、いつ寝てるの?」という次から次へと事件状態。しかもその事件が二重、三重に絡んでいて「どうなるの?どうなるの?」とページを繰るのももどかしいおもしろさ。
柴田よしき氏が1児の母なので、子育てや保育園の実態もものすごくリアルでおもしろいし、ストーリーテラーなので探偵業やヤクザの描写もすごくおもしろい。
んで、問題の山内は花咲とどう絡むのかというと、なんと花咲、「にこにこ園」の土地代の借金の方に、4千万の生命保険にかかって、その受取人が山内、という契約をしてしまうんですわ。つまり、返済が遅れたらこの世から消されちゃう契約。ここらあたりのバカ正直な花咲とクールな山内のやり取りも抜群。愛すべき男・花咲を愛する女たち、イタリア料理のシェフの理沙も、女医の奈美も、別れた元妻の弁護士麦子も最高!このシリーズも、いつか映像化されんかな――――?
・・・・・と思っていたら、いつの間にか二時間枠でドラマ化されていたらしい。ええええ?どうだったの?
花咲役は高橋克典がやったのですって。まあ、適役か。
んで、んで?山内役は誰がやったの?あの役ができる日本人の役者がいるの?ヘタな美形もどきじゃ許さんぞ。誰だ?誰がやったんだ?知りたー―――い。
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