バッタ
たぶんトノサマバッタの幼齢じゃないかと思うのですが、確かなところはわかりません。藪になった草むらは今やバッタだらけです。一歩進むごとにピョンコピョンコと四方八方に跳ねていきます。
20世紀初頭まで、大陸ではトノサマバッタが大発生して、一面空を覆い尽くす大害虫の群れとなる恐ろしい現象があったわけです。それは恐れをこめて「飛蝗(ひこう)」と呼ばれました。
通常のトノサマバッタは「孤独相」と言って、なんてことないバッタです。が、群れになって「群生相」となると、顔つきは凶悪になるわ、後ろ足は長く強力になるわで、長旅にも耐えうるようになります。その何億匹というオーダーの虫が、ありとあらゆる地上の植物を喰らい尽くしながら大陸を移動して行くのですと。
オソロシーですね。
中国には「易姓革命」という思想があります。「どんなに栄えた王朝もいつかは滅びる事を免れない。次の王朝に譲る天の時が来る。」という「ごもっとも」な思想なのですが、この「天の時」の兆しとして「飛蝗」があったのです。
なにせ一旦飛蝗が発生すると、ありとあらゆる植物を喰らい尽くすまで止みません。当然食べるものが無くなった民が、大量の流民となって少しでも食べ物のある土地になだれ込みます。それがまた中国の話ですから、人間の数も半端じゃない。飛蝗以上に凶悪な何十万、何百万と言う数の流民が大陸中を彷徨う。考えるだけでもこれまたオソロシー。そんな状態に国土が叩き込まれたら、まともな政治ができるはずがない。あっという間に王朝は滅びてしまいます。中国の歴史とはこれの繰り返しなのです。
幸か不幸か、我が国では国土が狭すぎて、トノサマバッタが飛蝗になるほどのべらぼうな単一作物の土地がありません。何でも中国から取り入れた我が国に「易姓革命」の思想が入ってこなかったのは、こういう自然条件の違いがあったわけです。
「万世一系」とやらが継続されてきたのは(これにもさまざま異論はありますが)、たまたまの自然条件からきた単なるラッキーなのです。
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