椿屋敷のお客様

椿・山茶花 Feed

2006年3月13日 (月)

椿「都鳥」

Nec_0020_11椿「都鳥」が咲きました。

都鳥はユリカモメのことで、海に近い河口に住む、全身が真っ白い鳥です。和歌にもよく歌われています。

その鳥の名を持つ椿なので、花弁は真っ白。「何の穢れもない白」というやつです。ものすごく品がいいです。近寄りがたいほどです。いや、ほんとに。

椿屋敷を建てた17年前になくなったじいさんは白が大好きで、この都鳥が大好きだったそうです。エロジジイだったのですが、妙なところで清潔好き。明治男の不思議でしょうか?都鳥を束にして墓に持っていきました。

八重で蓮華咲き、筒~割しべ。中~大輪。花期は四月。葉は長楕円、中形、波曲、樹形は立性でやや弱い。1841年の「古今要覧稿」にすでに載っている、古い名花なのです。

2006年3月11日 (土)

椿「菱唐糸」

Nec_0018_5 椿「菱唐糸(ひしからいと)」が咲きました。

濃桃色に少しだけ青の色素が入っています。通常椿に青の色素はないので珍しいのです。八重の唐子咲きで色もこれだけ派手でありながら、品がよい。名前の中に「菱」が入っている通り、花弁が直線的な菱型に開き、シャープな印象になるのがいいのかも。葉も長楕円で中形の肉厚で中折れして光沢があり、金属的なシャープな感じです。「かっこいい」花だと思います。

現代的なデザインといえます。でも古い関西の名花なのです。1844年の「草木便覧」にはすでに載っています。

2006年3月 9日 (木)

椿「岩根絞」

Nec_0008_14 椿「岩根絞」(いわねしぼり)が咲きました。

濃紅地に白斑が入る八重で、筒しべ、大輪のたいへん華やかで派手な花です。3月~4月が花期です。葉は卵~広楕円、中形、肉厚。樹形は横張り性。

10年か20年か前でしょうか、この「岩根絞」が椿の中で大流行したときがありました。まさしく「猫も杓子も岩根絞」状態だったのです。苗も木も売り尽くされ掘り尽くされた熱狂ぶりだったのを覚えています。

―――移植に弱い木なのにねえ。

確かにねえ。いい花だと思うんだけどねえ。なんだか「熱狂」というのとは違う世界のような気がするんです。資本主義における「流行」というのはほんとに恐ろしいです。「これだ!!」と喰いついたもののすべてを根こそぎ食らい尽くさねば気が済まないのが資本主義の神のようです。「札束でほおをはたく」ってやつか。怖いなあ~。

別に新種だったわけでもなく、1859年には「椿伊呂波名寄色附」という本にすでに載っている、クラッシックな銘花椿なのですが。

流行とは恐しいです。

2006年2月27日 (月)

椿「卜伴」

Nec_0020_10 椿「卜伴(ぼくはん)」がついに咲きました。

数ある椿の品種の中で、「卜伴」は好きな花№1です。この鮮やかな濃い紅色といい、花芯唐子の微妙な白といい、すごく好きです。気品というものを椿にしたらこれになると思います。

大きさも程よい小輪です。花期は3~4月。葉は長楕円の小輪。樹形は立性で枝は細くて疎。あまり強い木ではありません。

1719年、江戸時代にはすでに知られた、古典品種中の銘花。歴史も長いのです。この花を作り出して愛でた江戸という時代は、やはりかなり趣味のいい時代なのであります。

2006年2月18日 (土)

椿「玉之浦」

Nec_0034_8 椿「玉之浦」が咲きました。

どうです!?濃い紅色に白覆輪の一重、むちゃくちゃ華やかで気品のある花でしょう?まるで天女が舞い降りてきたような鮮やかな花です。

長崎県は五島列島、福江島玉之浦町の野生のヤブツバキ林に自生していたのです。まさしく天女伝説にふさわしい場所から産まれた椿。

1~4月という花期も、この花にふさわしい。葉は長楕円で中形、樹形は立性で枝はやや垂れる。

好きな椿はかずかずあれど、この花も大好きだなあ・・・・・。

2006年2月14日 (火)

椿「ヤブツバキ」

Nec_0027_6 ヤブツバキが咲きました。

日本が誇る椿の原種です。

わが椿屋敷農園は、庭にも畑にもあらゆるところに椿・山茶花の類が生えていて、秋から春のシーズンは「おう、こんな所にも、あんな所にも」花が咲き出し、しかも「~絞」だの「~錦」だのといったド派手な色と柄の品種モノだったりするわけです。畑の奥のほうなど白や桃色のが咲いているのですが、同定が間に合わぬうちシーズンが終わっていたりします。

んで、たとえば今日など畑の奥をモモとめーさんと散策していたら、なんともいえぬ品のいい紅色の椿が花をつけておる。「おおっ!」と、寄っていったら何の変哲も無いヤブツバキであったというわけです。

「何の変哲も無い」といいながらヤブツバキは本当にいい花です。飾り気が無くシンプルな花形に力強い紅色。またその色が素晴らしく品がいい。そこらじゅうに品種モノの椿が咲いているというのに、自然に目がひきつけられます。原種というのはそういうものなのでしょうか?「力がある」という美しさ。なにものにも揺るがない強さ。

まことにかくありたいものです。

2006年2月11日 (土)

日本ツバキ・サザンカ名鑑

Nec_0022_6 植物の同定に図鑑は欠かせません。

たとえばチューリップを説明しようと「花弁は6枚で(正確には3枚が花びら、3枚がガク)、釣鐘を上に向けたような形、色は赤、白、黄色など、草丈は30cm・・・」などと、いくら言葉を駆使しても、トルコ桔梗なんかをを持ってこられたりするでしょうが、絵に描けば子供の絵でも一発でわかります。それほど人間は視覚に頼る生物なのです。

外部情報の実に80%を視覚神経から入力しているといわれています。ここでいつも気になるのですが、人類発生から500万年、そのうちの4999900年ぐらいは動画なしの生活をしてきました。4999950年ぐらいはTVなしで生活してきて、それなのに特にこの30年ぐらいは先進国で大多数の人間がTV漬け、もしくはコンピュータのスクリーン漬けの生活をしています。大丈夫なんでしょうか?今人類の目は発生以来の何百万年とはとんでもなく桁違いの情報を浴び続けているのです。

現に近視の人間(わたくしを含めて)だらけになっておるわけですが、それ以上にその情報を入力され続けている脳のほうは?脳の情報処理能力は本当に追いついているのでしょうか?人類の今までの進化にはまったくなかった性質の奔流のような視覚情報の洪水。普通の人間の脳で本当にそれをさばききれているのでしょうか?

「冬眠」の記事でちらりと述べましたが、太陽光を浴びることは本来昼行性の人類には重要なことです。太陽光不足による「冬眠状態に近いといわれる鬱病」が存在するわけですが、それ以上に人類は「冬眠」でもせなやっとれんぐらいの過剰で危険な情報の洪水にさらされておるのではないでしょうか?情報処理に疲れきって思わず動けなく(フリーズ)なるほどの膨大な情報に。

TVを見ると最近特に疲れるのです。目が悪くなったというのもあるかも知れませんし、ここ10年ぐらい朝6時のニュースと夕方7時のニュースと「なんでも鑑定団」と「たかじんのそこまで言って委員会」ぐらいしか見てないのでついていけないのかも知れません。オリンピック中継も疲れて見つづけることができません。「自分で情報を調整し、制限できる」という点で、マンガや本のほうがまったく疲労しなくてすみます。だからといってマンガ漬けになっとりゃ世話はないのですが。

まあ、おかげさまでうちには農園がありますので、そこの緑と動物に関する仕事は次から次へと絶えることはありません。これは体は疲れますがTVを見た後の脳みそがぐったりする感じはないのです。母方のじいさんが遺してくれた椿や山茶花の同定も、なかなか調べるのはたいへんですが「疲れる」という種類のものではありません。

この「日本ツバキ・サザンカ名鑑」(日本ツバキ協会編・誠文堂新光社)の2400種が載った図鑑を木の下まで持っていって「あれでもない、これでもない)と検討しておるわけです。とはいえ素晴らしい写真がついていますので、かなり速やかに同定ができます。リーズナブルで持ち運びがしやすい割には凄く便利。昔の椿図鑑はなにやらぶあつーい作りで、持ち上げるのにも重かった。あちこちの椿の銘木の写真が載りすぎていて厚さ20cmはありました。それにくらべりゃこの本は情報が制限されていて使いよいです。厚さも2.5cmだし。よい本じゃ。

「椿・山茶花」欄の「品種解説」はこの本を参考にしています。

2006年2月10日 (金)

椿「大唐子」

Nec_0019_7 椿「大唐子」が咲きました。

椿の中にはこのように中の花弁がぐちゃぐちゃになる系列があり、「唐子咲き」と呼ばれています。中華文様でよく見かける「唐子ヘアー」に確かに似ています。

この系列であんまりでかかったり、色が派手だったりすると、なんだか人間の脳みそみたいでグロテスクだったりするのですが、さすがに本家「唐子」、紅色一色と中大輪のコンパクトな花型のバランスが良く品があります。

中身が唐子咲きで、外弁は二重の平咲き、花期は3~4月なのですが今年は早いなあ。樹形は立性で強い。「京唐子」という白の絞りが入った品種の枝変りから始まりました。親の「京唐子」よりこちらのほうが品がいい。

2006年1月26日 (木)

椿「エレガンス・ビューティー」

Nec_0027_5 椿「エレガンス・ビューティー」が咲きました。

「エレガンス・ビューティー」とは派手な名前です。実際その派手な名前に負けない派手派手な八重のどピンクの大輪の花が咲きます。あと少し色が濃かったり花が大きかったり花弁が多かったりすると、多分下品になっていたであろう、ぎりぎりの美しさです。

こういうはったりをかましたような花も好きだなあ。

エレガンス・ビューティーはいわゆる「カメリア」で、海外で品種改良された椿です。「浮世絵」や「根付」や「日本犬」や「錦鯉」なんかと同様に、椿も江戸時代の文化の一部としてヨーロッパでもてはやされた時期があり、そのとき以来の愛好家が盛んに「カメリア(椿の英語名)」の品種改良をしています。

日本にもだいぶ逆輸入されていますが、はっきしいってねえ、「ああ、ハリウッドが考える芸者みたいな派手さだなあ・・・」という花が多いんですよ。花芯が脳みそみたいにぐちゃぐちゃになってたり、ただただ大輪だったりね。

しかし、もちろん「おお、これは!」というようないい花もあったりするので油断ができません。エレガンス・ビューティーは「これは!」のほうの花です。

2006年1月21日 (土)

椿「太郎冠者」

Nec_0009_7 椿「太郎冠者」が咲きました。

これがまた銘花でして。たいへん品のいい紫を帯びた桃色、ときに白斑も入る一重の筒咲き~ラッパ咲きの中輪です。この形と色のバランスがな~んとも言えず品がいいのですよ。よくお茶席の花に使われますし、坪庭なんかにも植えたりします。花期は12月~4月。

「太郎冠者」は狂言のなかによくでてくる、どじで間抜けな従者ですが、こんな品のいい花にその名前をつけてしまうのがなんともいえないギャップです。こういうところがお江戸のシャレですかね?

葉は長楕円で、中形から大形。樹形は立性で強いです。

1739年の「本草花蒔絵」にはすでに載っているという、歴史のある銘花です。これの実生からできた変異種の侘助があり、これがまたいい花なんですよ。