椿屋敷のお客様

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2006年10月

2006年10月25日 (水)

ウマノアシガタ

Nec_0032_26牛をも中毒させるという、ウマノアシガタです。今時分盛んに黄色い花を咲かせてはよくひっかっかる種をつけています。

日置の実家の近くに「クワンシキ」という悪所があり、 そこは小さな谷の小さなドブ川のすぐ上にある更地でした。昔から誰がどんな屋敷を建てても、その家で人が死んだり、離散したりして更地になってしまうのです。

うっそうと茂った樫や何やの雑木に囲まれた100坪ぐらいの空き地で、いつも鬱々ジメジメと湿って藪になっていました。ハブ以外の九州に棲息するありとあらゆる蛇がいました。マムシ、アオダイショウ、ヤマガカシ、シマヘビ、メクラへビ、カラスヘビ・・・・・。現にここに探検に入ったわたくしの同級生のズボンにアオダイショウが喰らいついたという話でした。こういうところにありがちな古井戸があり、水神様の祠がありました。大人の噂では「この水神サアが荒神なので、人が居着くことができないのだ」ということでした。

一番下の妹が小学校に上がるぐらいの頃、ちょうど今の季節でしたか、ある夜いきなり高熱を出して「手が痛い~手が痛い~」と泣き出しました。あまりに苦しむのでホームドクターが「大学病院に行きなさい」と奨め、そのまま鹿大病院に入院してしまいました。

診断は「原因不明の小児リューマチ」。

幼い妹の両手の小指はパンパンに腫れ、検査検査でひっきりなしに血液を採られて腕は注射痕で青アザだらけ。一月を過ぎても原因がわからず、心痛めた両親はとにかく妹に熱を出す前後の事情を聞いてみたらしいです。

妹は「熱を出した日に、友達とクワンシキに遊びに行った。あそこで冒険して遊んでいるうちに、水神サアの祠の花瓶を割った。そのとき花瓶でちょっと手を怪我した。悪いと思ったので牛乳ビンを替わりに置いてきた」と言ったのでした。

藁をもすがる父は「それだ!」と思い、神具屋でちゃんとした神棚用の花瓶を買いクワンシキに急行しました。そして水神サアの妹が供えた牛乳瓶と取り替え、花を供えて拝んだのでした。そのときなぜかわたくしもついて行ってたのですが、父はクワンシキの入り口でわたくしを待たせ、敷地に立ち入らせませんでした。見るとちょうどこのウマノアシガタがクワンシキの敷地に大繁殖して枯れて種だらけになり、足を踏み入れるごとに噛み付くようにに引っついてくる有様だったのです。もう冬に差し掛かっていたにも関わらず、空気はむっとして湿り、どんよりとした重さを湛えていました。なんというか子供心にも禍禍しくも荒廃した淋しい風景だった事を覚えています。

不思議な事に、妹の手の腫れは原因がわからないままその日を境に薄紙をはぐようによくなっていったのです。すっかり元気になって、今や二児の母です。

それ以来「入ってはいけない悪所はあるのだ」と思います。「水神サアの祟りだった」とはいいませんが、湿気なのか空気なのか土壌なのか人や生き物に悪影響を及ぼす場所はあるのだ、と。土地の人が「入ったらイカン」という場所には入らんほうがいい。「触らぬ神に祟りなし」は本当だ、と。そして荒れ果てたクワンシキに広がる枯れたウマノアシガタの原を思い出すのです。

2006年10月24日 (火)

ノイバラの実

Nec_0031_24林の中で赤くかわいいノイバラの実がなっています。

正確には”実”ではなく”偽果”というらしいです。見た目どおり歯も立たないほど固くて、齧ってもおいしくありません。(我ながらなんでもかんでも、「嗅いでみる、舐めてみる、齧ってみる」動物かよ?ったく。)

クリスマスのリースに使ってもいいようなかわいさ。にもかかわらずその薬効は利尿・下剤・あとオデキ・ニキビ・腫れ物。外見に似合わずなかなか尾籠な効き目であります。

ヨモギの花

Nec_0029_21 ヨモギの花が咲いています。

子供の頃「ヨモギは血止めになる」と、ちょっとした傷なら唾つけてもんだヨモギの葉を貼り付けていました。ホントにそういう効果はあるのでしょうか?確かに血は止まりましたが、ヨモギの薬効だったのか自然に止まったのか、わかりません。

もっとも「汚い~不潔~!」といわれそうな対症方法にもかかわらず、化膿もせず敗血症にも破傷風にもならず成人しましたので、害になるということはないのでしょう。

ヨモギの独特の匂いは、嗅ぐと落ち着きますね。いかにも薬効がありそうで。実際ヨモギ酒は喘息に、葉の毛は艾に、ヨモギ風呂は腰痛・腹痛・痔に、艾葉は健胃・貧血・下痢止めに効くのですと。新芽をつんで草餅に。ヤギも大好きでよく食べます。

2006年10月23日 (月)

ヒイラギモクセイの花

Nec_0030_19門のすぐ傍にあるヒイラギモクセイの木はなかなかの大木です。高さ4mはありこんもりと茂った木です。

去年は夏に剪定したために花が咲かなかったのですが、今年はちゃんと花芽がついたらしく、今朝みたら木の下に雪のように白い花が散らばっていました。キンモクセイよりは柔らかな香りがそこらに漂っています。夕べの雨が咲いたばかりの花を散らしたのでしょう。しかし、盛りの花はちょっとやそっとの雨で落ちても、尽きることなく咲いています。何という豊かさ、惜しみなさ。

木が古くて大きい庭は、ちゃんと手入れするとすごく落ち着いた庭になるのですが。恥ずかしながらなかなか行き届きませんで・・・・・。にもかかわらず、木のほうが勝手に花を咲かせてくれたり実をつけてくれたりしてくれるので、どうにか季節の格好がつきます。なんともまあ、ありがたいことです。

ミノムシ

Nec_0021_231990年代半ばから、寄生虫オオミノガヤドリバエによる「絶滅の危機」がいわれ、いろんな県でレッドデータブックに載ってしまったオオミノガですが、数は回復したのでしょうか?今うちの近所では結構見かけるので「どうなんだろう?」と・・・・・。

県によっても、都市部と農村部とでも、全然生息状況が違うらしいので、ちゃんとしたデータを持っていない以上なんともいえないのですが・・・・・。

それにしても、よく「大発生!」と騒がれたミノムシがいつの間にか「絶滅の危機!」といわれている状況にはたまげました。

だってさ、ケヤキとかにやまなりについて、関東とかのケヤキ並木が丸坊主になったり、住民が文句言いまくったり、そんなんばっかりだったんだよ。

あまりにもミノムシの数が多かったので、この蓑のなかのサナギをくるむ繭を切り開いたのを何枚も集めて、パッチワークみたな細工物を作る人がいたりしたのに。一枚一枚が微妙に違うアースカラーの繭をパッチワークした財布とかバッグとか。なかなか綺麗だったし、手がかかっているという理由で、かなりお高かったはず。あの細工物はどうなったんでしょうか?

何億、何千億という個体数の動物が、あっという間に絶滅する。そういうことは生物の歴史の中ではよくあることで・・・・・。特に人類の活動範囲が広く盛んになりだしてから、その傾向は拍車がかかっておるわけで・・・・・。

オオミノガヤドリバエも、中国でミノムシ撃退のためにばらまかれたのが日本に入ってきて、日本のオオミノガに壊滅的な打撃を与えてくれたのだそうです。ミノムシまで絶滅されるとちょっと怖いので、なんとかがんばって欲しいです。

2006年10月22日 (日)

ガマズミの実

Nec_0028_22ガマズミの実がなりました。

熟すとなんともいえないワインレッドになり、きれいです。大根や蕪の漬物の色付けに使う地方もあるそうな。さもあらん。いい色です。

利尿作用や疲労回復用のガマズミ酒を造ったりもするそうな。200~300gの果実、1.8Lのホワイトリカー、200gの氷砂糖をあわせて冷暗所で2,3ヶ月。それを漉して材料引き上げ。甘酸っぱい野生の果物の味がするので、これはおいしいかも。

そういえば今日は妙円寺参りの日。鹿児島県民なら誰もが知っている「関ヶ原における島津義弘公の活躍をしのんで行われる祭り」です。

この活躍というのが、聞くだに疲れるお話で。

知ってのとおり関ヶ原では徳川が豊臣を下しました。島津家は豊臣家にお味方しとったわけですが 、「いよいよあかん」と西軍総崩れとなったときに齢60歳を過ぎた島津義弘公がとった戦法はなんと「中央突破」。敵陣真っ只中を突き進み、総大将家康のすぐそばを突破して、そのまま関ヶ原を走り抜け、堺の港まで走っていったそうな。

いかにも薩摩武士らしい話でありましょう?

これにはまだいろいろおまけがついていまして、薩摩の国許で義弘公の危機を聞きつけた鹿児島中の郷士達が、取るものもとりあえず関ヶ原方面へ走って向かったのじゃと。その中でも出水兵児の中馬大蔵(ちゅうまんおおくら)は、そのとき畑を耕しておったのじゃが、ちょうど通りがかった関ヶ原へ走る鎧櫃持った郷士から話を聞き、そのまま鎧櫃を奪って関ヶ原へ向かったのじゃと。

敗走の兵たる島津軍は、そういう鹿児島中から駆け上った兵たちに守られて、なんとか堺の港からピストン輸送されて鹿児島に帰ってきたんじゃと。

・・・・・・なんちゅうたらよかとでしょうか。なんちゅうボッケな話でしょう。薩摩人は戦国の昔から薩摩人です。さらにボッケな話なのが、「その先人の苦労と勇気を忘れないために」えんえん400年以上も「妙円寺参り」と称して子供達が鎧兜をかぶって島津義弘公縁の伊集院町の寺に何十キロも歩いて詣でる習慣が続いている事です。義弘公の活躍を称える「妙円寺参りの歌」をエンドレスで歌いながらです。

まったくもって薩摩人のやることです。

今日はきっとたくさんの子供達が何十キロも歩いて疲れた事でしょう。未成年じゃなかったら疲労回復のガマズミ酒でも飲ませてあげたいぐらいです。

ハヤトウリ

Nec_0027_18 「隼人」の名を持つハヤトウリがなっています。

あまたあるウリ類の中でも野生種に近い品種なんじゃないでしょうか?なんか植えた覚えもないのにいつの間にか生えてきたりしてるんですよ。実なんか捨てたら一発で翌年そこから生えてきます。

名前の通り鹿児島特産なのかも。大阪とか東京で見かけた覚えがありません。漬物にしたりしますね。あまり「おいしー――!」というシロモノではないような気もするのですが、いかがでしょう?それともおいしくするレシピがあるのでしょうか?おいしい食べ方をご存知のかた、ぜひ教えてくださいませ。

2006年10月21日 (土)

ヨウシュヤマゴボウ

Nec_0024_23 色鮮やかな実と”ヤマゴボウ”の名を持っていますがれっきとした毒草です。

全草、特に牛蒡に似た根っこにフィトラカトキシン、フィトラカゲニン、硝酸カリウムを含むそうな。あぶね―――!!よく「ヤマゴボウの漬物」の材料と勘違いした人が、掘り上げて漬物にして中毒しておるそうな。あっぶね――――!!!漬物にしておるのはキク科のモリアザミの根。品種モノの牛蒡もキク科なんだからさ。みなさん間違っちゃダメですよ~~~。と、人どころではない。自分も間違わんとこ。なにより家畜に食べさせないように注意せねば。この写真も畑に自生しているヤツなのです。

毒草、しかも「洋種」の名を持つ帰化植物、山の中にたいした繁殖力で生えるわ、木の生育を妨げるわ、しかも和種のマルミノヤマゴボウと競合するわで、どうもお尋ね者のようです。京都府の外来植物の対策室がHPでWANTEDしてました。あああああ。でも、撲滅できないんだろうな。マルミノヤマゴボウなんかほとんど見ないのに、これはうちの近所でもよく見かけるもん。帰化植物ってホント強いよなあ。見習うべし。

邪魅の雫

Nec_0026_21 というわけで、待ちに待った「京極堂シリーズ」最新作「邪魅の雫」(京極夏彦著・講談社)買いましたよ。んで、一気読みしました。817p。

あいかわらず分厚いです。うっかり寝転がって鼻に乗せて居眠りしたら間違いなく窒息します。でも、京極夏彦の凄いところは、このページ数をまったくもって理路整然と、しかも毎回毎回違う趣向で開陳してくれるところです。凄い。何という整理能力でしょう。京極夏彦たいへんな量のあらゆるジャンルの蔵書を持ち、それを誰もが呆れるほどの美しさで収納しているらしいです。そういう人にしてはじめて書ける作品であります。

「故獲鳥の夏」をはじめて読んだときに、心より「あたし日本人でよかった!」と思いました。「日本人でなきゃこの漢字だらけで日本的な言い回しのみで構成された小説の味はわからんだろう。日本語を日常的に使う国に生まれて、この小説を読む幸運に恵まれてよかった」と幸せを噛みしめたものです。シリーズが進むにつれてますますその思いを強くしています。

偏見ですが英語で書かれたスティーブン・キングやアガサ・クリスティは邦訳で読んでも結構味は伝わってるんじゃないかなあ?と思うんですね(原文を読んでないくせに決め付けてます)。でも京極夏彦、特に京極堂シリーズを英訳するのは不可能じゃなかろうか?広い世の中のことだから、たぶんもう英語版も出ているのかもしれませんが、それはもう原文のシリーズとはまったく違うものじゃないでしょうか?「故獲鳥の夏」は映画化されましたが、それもたぶんまったく違うものなんじゃないかなあ?観てないくせに決め付けてますが。それほど京極夏彦の文章世界は独特です。他に類がない。空前絶後とはこのことです。

さて、今回の「邪魅の雫」、どちらかといえば今まで脇役もいところだった警察の面々、元警察官の益田、現警察の青木、山下にスポットライトが当たっています。(京極堂と訳アリっぽい、公安の郷嶋、ちょっとかっこいいぞ)いつもの主役クラスたち、憑き物落としの古本屋京極堂、鬱病小説家の関口、ドはずれ警官の木場、そして何より神に等しい探偵榎木津の活躍場面はあまりありません。いわば脇役ユニットによるバージョンにもかかわらずこのおもしろさ。社会派警察小説のような趣です。松本清張や高村薫ばり。ほんと何でも書ける人なんだなあ。

まあ、わたくし芯から榎木津ファンなので、もっと出番が欲しかったところですが、いつもと違う榎木津を見ることができたので良しといたします。そうか~。榎木津。傍若無人な彼にもこういう一面があったのね。なんだか心がキュウンとなりました。これ以上はネタばれなので触れません。

京極堂シリーズファンのみなさま、やっぱり「邪魅の雫」はおもしろかったです。んで、まだ未読の方々はまずシリーズ最初の「故獲鳥の夏」からお読みする事をお薦めします。自分の中の「日本語の可能性」がグ―ンと拡がる事間違いなし。それはとても幸せなことでありますよ。騙されたと思って。ぜひ。

2006年10月20日 (金)

ムカゴ

Nec_0023_17ヤマノイモのムカゴであります。

種ではありません。栄養体とでもいべきシロモノですか。ヤマノイモは①種②根③ムカゴの三段構えで増殖するというわけです。ちょっとした藪にはすぐヤマノイモが生えるはずです。

ヤマノイモ=自然薯、生やすのは簡単だし、というか勝手に生えるのですが、自然薯を掘るのは至難の技であります。根性と体力の極限を試されます。おいしいのですがねえ。おいしいものを食べようと思ったら手間と努力が必要なのであります。

さて、ムカゴは地上部にくっついているし、ちょっとした刺激で簡単に取れます。これがまた根っこのヤマノイモと似た味がします。塩でさっと茹でて食べるとホクホクしてうまい。ただ小さいために量を集めるのがたいへん。取れやすさも肝で、あっという間に地面に散らばってしまいどこにいったかわからなくなります。やっぱりおいしい思いをしようとするなら、手間と努力が必要なのです。