名香智子というマンガ家さんが昔から好きです。信じられないぐらい華麗なカラーを描く人なのですが、お話がこれまた信じられないぐらいえぐかったりします。この人の凄いところは、そのえぐいお話を実にさらりと描いてしまうところです。
「レディ・ギネヴィア」(現在小学館文庫にて入手可能)は20年ぐらい前、新書館の「グレープフルーツ」という雑誌に連載されていて、新所館からものすごく豪華な装丁のハードカバーの上下本が出ていました。今にして思う。「あれ買っときゃよかったよ!」
(得てして本とかマンガは一期一会。巡り合ったときに買わないともう二度と会えなかったりするものです。)
「レディ・ギネヴィア」は、当時の少女マンガにありがちなたいそう浮世離れした設定で、ヒロインのレディ・ギネヴィアがイギリスのキング公爵令嬢。黒髪と緑の瞳の絶世の美女のくせに馬キチガイで、この世の馬という馬の顔は区別がつくが人間の顔の区別がつかないという変わり者。もちろん馬術は世界チャンピオン。趣味は馬の種付けというから徹底している。
この彼女に片思いしているのが、彼女と馬術大会でよくあうスウェーデン人の屈折したプレイボーイ・リアンダ。
衝撃的なことにですね、この二人馬の種付けのことで揉めて(!)ですね、リアンダがギネヴィアをレイプ(!!)してしまうのですよ。
いやああ、びっくりしましたね。いまでこそ少女マンガはH(この言い方嫌い)花盛りですが、当時の少女マンガでお話の初めのほうで「いきなりヒロインがレイプされる」ですよ。しかも馬小屋ですよ。なあ。
(もっとも、この「馬に絡んでレイプ」というのは名香氏のお好みのシチュエーションらしく、同じ頃長期連載していた「パートナー」(小学館文庫)でもヒロインの茉莉花が「馬で遠乗りして雨宿りした先でレイプ」されていました。)
華麗な絵なんですがねえ、浮世離れした設定なんですがねえ。これにとどまらずなかなか過激な価値観とストーリーが繰り広げられるのですよ。ヒロインのギネヴィアが魅力的なのはもちろん、リアンダの元恋人のインテリのドイツ女性ユーリエ、ギネヴィアの兄のサー・アーサー・キング(なんちゅーネーミングや)。それぞれが個性的で素敵ですが、なんといってもプレイボーイのリアンダの身もふたもない身勝手さ。少女マンガの男はご都合のいい王子様ばっかり全盛の時代に、よくこんな男をヒロインの相手にしたよな~。
まあ、百聞は一見にしかず、読んでみてください。わたくしにとっては大切な宝石箱のような一冊です。
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