リフォーム
住まなくなった家はあっという間に廃屋になる。「その疾(はや)きこと風の如し」である。特に木の民家なんかてきめんで、空気の出入りがないと、障子や襖が閉まらなくなり、畳や壁にカビが生えて腐りだし、そうこうするうちに瓦が落ち天井が落ち床が落ち、どこからともなく蔓草や萱が家の中に生え出し、立派な廃屋の出来上がりである。
世は「田舎の家」がブームだが「ホントかよ?」といいたくなるぐらい、鹿児島市の郊外でもやたら廃屋が目立つ。「田舎の家」の管理と維持のたいへんさを知っている子供たちが親の家をそのままにしているのである。 週1でも帰って手入れのできる余裕のある家族は稀だろう。
「自分にマンション住まいは無理だ。」と悟り、鹿児島に帰ってきた。そのときが日置の父方の家と今の母方の家に手を入れるぎりぎりのラインだったと思う。間に合ってよかった。当時日置の家は築150年以上、建物だけで200坪、二階と中二階があり、何年も誰も住まず、本物のお化け屋敷であった。特に北側の棟は根太が腐り、うっかり踏み込むと畳ごと床下まで落ちた。昔の家なので床が高く90cmはある。むちゃくちゃ怖かった。巨大な蟻地獄にはまったような恐ろしさ。
北側の棟は梁もシロアリが喰っていたため、ある日何の前触れもなく大音響を立てて家そのものが梁とともに崩壊した。道路にまで瓦礫がなだれ落ち、半分をふさいだ。田舎の真夜中のことで通行人が誰もいなくて本当に良かった。その頃はもう祖母も大往生し、父も元気になったので、父自らリフォームに取り掛かり始めていた。それでそのまま北側の棟を解体し、更地にしてしまった。床下から出てきた井戸もちゃんと御祓いしてもらって埋め立てた。
まだリフォームは続いている。この写真は今の日置の家である。「黒塗りの柱」に「漆喰壁」「砂壁」と、少しずつ「こじゃれた古民家、でもトイレは水洗ウォッシュ機能付」の体裁が整ってきている。ここまでになるのに5年はかかっている。わたくしの代で維持できるだろうか?
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